ゴルフ場の経営は、巷で考えられているほど、甘い汁を吸えるものではない。
ゴルフ場を経営している企業は、大企業の関連企業が経営母体、外資系、ゴルフ場経営専業企業に、大きく三分類できる。
そしてそのほとんど全てのゴルフ場は、低収益に悩んでいるのが実態だ。
そもそもゴルフ場は、鉄鋼や化学業種と同様に、巨大な装置産業だ。
膨大な初期設備投資資金が必要だし、メインテナンスもまた多大なコストがかかる。
しかしその一方、どのゴルフ場も、売り上げ金額は極めて小さい。
だから、利益率は小さいし、ゴルファー数が頭打ちになれば、すぐに稼働率低下から赤字経営に転落する。
バブル崩壊以前のゴルフ場経営者たちは、この巨額の初期投資金を、預託金と称して会員権を売買することで調達していた。
他人からの預り金なのだから、いずれは返さないといけない。
しかし会員権相場は右肩上がりと信じていた連中は、返却することなど全く考えず、何かある度に新規募集を続けた。
これは体の良い偽札発行と一緒なので、いずれは必ず破綻する。
ついでに言えば、茨城カントリークラブ事件が起きたのもこの時で、この頃にゴルフ場を開発していた連中はほとんどが詐欺師だ。
実は、派手な宣伝で会員を募集した茨城カントリークラブだが、最初から会員権を所持したくて仕方がない、善良な会社員を相手に仕組んだ詐欺だった。
この詐欺師どもは、会社員が無理して投資できる金額を2百万円と設定し、5万人の会員権を販売、千億円のカネを集めてハワイに逃亡した。
事程左様に、ゴルフ場を専門に経営していたのは、胡散臭い連中ばかりだった。
そこにバブル崩壊が来た。
最初から全く返済意思など皆無で金集めをしてきた連中は、慌てふためいて「理事会」を開き、勝手気ままに預託金返済期日延長を決めて危機を凌いでいた。
しかし裁判の結果、返済期日延長が認められなくなり、それまでやりたい放題に会員権を発行してきた企業は全部行き詰った。
そこに救いの神を装ったハゲタカ軍団の外資が登場し、この手のゴルフの経営権を買い漁り、会員権はプレイ権だけが保証された借金棒引きの紙くずになった。
現在の外資系ゴルフ場は、例外なくこのケースだ。
大企業がバックなら安心と思われ、ソコソコに高値相場を維持していたゴルフ場もまた、倒産の憂き目にあっている。
株主からの厳しい監視が増えてきた大企業は、不採算部門は縮小しなければ経営責任を問われる時代だ。
ゴルフ場を経営していると言えば聞こえが良く、気持ちの上ではゆとりを持てても、事業としての魅力はまるでない。
「選択と集中」などが経営指標になると、ゴルフ場を切り捨てる企業が続出してきた。
ここでもゴルフ場専門業者に経営権が移り、やはり会員権は紙くずとなってしまった。
現在それなりに健全経営を続けているメンバーシップゴルフ場は、会員が金持ちで、年会費もプレイ費もべらぼうに高い超名門コースだけだ。
後のゴルフ場は、何としても稼働率を稼ぐためには、メンバー優先のようなきれいごとを言ってはいられない。
平日は超ダンピングで客を集めているので、もはやメンバー以外でも簡単に、且つ安値でプレイが可能になっている。
世界中にマナーの悪さが知れ渡っている韓国人ゴルファーたちも、ゴルフ場は背に腹は代えられないので、今や大事なゲスト扱いだ。
昔は高嶺の花だったメンバーの価値も暴落し、メンバーでなければスタートが取れない時代など、夢物語と化した。
ゴルフに興味のない若者も増えている。
会員権相場はどんどん下がり続けているが、二度と元に戻ることもないだろう。
月例で優勝したいとか、ゴルフを通じて知らない人とも仲良くなりたいとか、そんな高尚な思いでもなければ、ンバーシップに拘る理由などなくなってしまった。
だから、会員権を所有しているのなら、サッサと現金化する方が良い。
ゴルフ場経営は、それほどの袋小路の中だ。