どこからか個人情報が漏れたようで、迷惑メールが殺到する。
それは「成人映画サイトの料金が未納」などと、まるで身に覚えのない当方には噴飯モノの内容だが、もう一つの特徴が、何とも摩訶不思議な日本語メールなのだ。
明らかに、どこかの外国語を、翻訳ツールで日本語に仕立てたものだ。
結構話題になっている詐欺メールなので、同様の被害を受けている人も多いはずだ。
こんなバカげたメールは、無視するに限る。
ところで僕が引退した時、「感謝の集い」の幹事役を買って出てくれた五人の後輩の参考になればと思い、A4用紙30枚にも及ぶ、仕事の体験記を書き上げた。
「出版したら印税数千万円は固いものだが、君たち五人だけにプレゼント」との誇大宣伝が効いて、後輩連中には比較的好評だったが、その中の一人が今回海外に赴任した。
そのオトコから、「ナショナルスタッフにも紹介したいので、英語版を」とリクエストされた。
「それこそ君の仕事」となったのだが、忙しい彼のことを思い、またちょうど英語の勉強の一石二鳥にもなるので、こちらで英語版にトライしてみた。
ところが実際にやってみると、この作業はとんでもなく難しいし、全くはかどらない。
英語初心者にとって、英語で文章を作るのはエラク大変な作業なのだ。
30枚の書類を英語化しようとする大胆な試みだが、冷静に見れば、残りの人生全てを捧げても、とても完成できそうもない。
そこで、迷惑メールのことを思い出した。
日本語への翻訳は変な文章が多いが、その逆で、日本語を英語に翻訳するのはどうだろうか。
カンニングに近いズルの臭いがするが、とにかくやってみた。
ところが意外なことに、ちゃんとした英語になっている。
無論、ニュアンスがまったく違っていたり、とんでもない誤訳もある。
しかし、曲がりなりにも英語の読み物が出来上がった。
細部のチェックは必要だが、これならナショナルスタッフへの紹介もありだ。
言語としては単純な英語を、複雑怪奇で微妙な言い回しの多い日本語に訳すのは難しいが、その逆はそうでもないようだ。
それにしても、便利な世の中になったものだ。
翻訳ツールのお陰で、何となくグローバル学者になった気分だ。