今の野球は、投手の完全分業制が徹底している。
先発完投なんぞは、シーズンで数回しかない。
先発投手の責任は5回までで、その後は複数の中継ぎ投手で繋ぎ、最終回は抑え専門のクローザーで締める。
野村克也が南海ホークス監督時代に、先発完投に拘る江夏豊を「野球界に革命を起こそう」と抑え投手に抜擢以来、全チームがこのやり方をまねるようになった。
その意味で、野村と江夏は、本当に野球界に革命を起こした。
尤も野村-江夏よりも先駆者として、巨人の「8時半のオトコ」宮田征典がいるので、実際の革命家は川上哲治と宮田だとの説がある。
ただ、オールスター戦で九者連続三振などの大記録を持つ快速球ピッチャーだった、江夏豊の華麗な転身のインパクトが強く、抑えは江夏の専売特許みたいになった。
実際、広島時代の1979年日本シリーズ、「江夏の21球」は、プロ野球ファン全ての伝説になっている。
今でも、強い野球チームには、絶対的な抑え投手がいる。
ちょっと前、横浜の佐々木主浩が出てきたら、もう勝負あっただった。
ソフトバンクのサファテも然り。
しかし今年は、各チームともストッパーで苦労している。
横浜の山口康晃と楽天の松井裕樹は、比較的安定した抑えだが、後は、抑えることができるのかは、やってみないと分からない連中ばかり。
その為、勝っていたのに、一番肝心の抑え投手が乱調で負けてしまう試合を、数多く見ることになっている。
本来なら、ストッパーが出たところで、敵チームはギブアップになるはずだが、この二人に関しては「チャンス到来」と勇み立つ結果となっている。
二人とも、投球フォームと顔だけは勇ましいが、投げるボールはまるで遅い。
バッターは、顔とピッチングフォームを見て、超スピードボールが来ると構えるが、そこに山なりのボールが来るので、タイミングが狂う。
そこで打ち損ないになるのだが、ビシッとしたストレートでねじ伏せてアウトにするなんて、全く無縁なピッチングだ。
こんなコケ脅し投法が、長続きするはずがない。
バッターがちょっと慣れてくると、もう通用しない。
ジックリと構えられると、投げる球がなくなり、投球数が異様に増える。
この二人が抑えに出てきて、三者凡退で終わった試合を見たことがない。
守っている野手にとっては、たまったものではないだろう。
緒方孝市監督も工藤公康監督も、いい加減にこんなヘボピッチャーを抑えで起用するのをやめればいいと思うが、何せ抑えて勝った試合もあるのでなかなか決断できない。
結果としてファンは、勝っている試合では毎回、「大丈夫か?」と、ハラハラドキドキの結末を迎えることになる。
尤も、そのハラハラ感が堪らないと、マゾヒスティックなファンもいるようだ。
両チームのファンには、「あの抑え投手でセパ両リーグの首位争いをしているのだから」と、満足感すら感じられる。
広島ファンに至っては、「中崎劇場」と命名して、むしろ楽しみにしているとも聞く。
僕は、広島ファンでもソフトバンクファンでもないので、彼ら二人が抑えに失敗して、チームが負けても痛くもかゆくもない。
またファンが、あんな抑え投手でもいいのなら、敢えて文句を言う気にもならない。
ただ抑え投手は、ゲームを引き締めるためにも、ビシッと決めて欲しいと思っている。
昔の江夏、佐々木、サファテの時代が懐かしい。