何せ、「音楽の都」ウィーンだ。
せっかくウィーンに来たからは、コンサートに行かない手はない。
という事で、この日は午前11時からのウィーンフィルコンサートを聞きに行く。
指揮は、あの有名なズービン・メータで、彼の甥っ子でカウンターテナー歌手、ベユン・メータとの共演もある。
ズービン・メータは、如何にもインド出身者らしく、眼光鋭く、彫りが深い。
イスラエル交響楽団との関係が深く、ユダヤ人と思い込んでいて、精悍な武闘派指揮者のイメージだったが、 舞台に登場した彼は、見るからにヨボヨボ。
歩幅が狭く、ヨチョタ歩きなので、指揮台に到着するまで時間がかかる。
最初は短い演目だったので、立ったままで指揮していたが、甥っ子の熱唱が終わり、最後の交響曲の指揮は、最初から座ってやっていた。
それでも、さすがにウィーンフィルだけあって、不協和音が連続するストラビンスキー作曲「春の祭典」交響曲を、一糸乱れず演奏する。
合計二時間半の短いコンサートだったが、満足度は高い。
尤も素人観戦者の僕は、アンコールを期待していたし、多くの観客もまた同じ思いで拍手喝采しているが、肝心のヨボヨボ指揮者には、もはやそんな体力は残っていない。
観客の拍手に満足気に手を振り、またヨタヨタと引き上げてしまった。
拍手して、損した気分だ、
夜は、スターツ・オパーのバレエ「椿姫」を鑑賞する。
バレエを鑑賞は、サンクトペテルブルグのマリンスキー劇場以来、三年ぶりで二度目。
こちらはコンサート以上にまるで素人なのだが、オペラと違って歌詞の意味を知る必要もないし、バレリーナの踊りを見ればいいのだから、気分的には楽だ。
午後7時開演なので、軽めの夕食はすっかり馴染みになった日本料理「日本橋」で、ぶっかけうどんを。
この店の味付けはまるで日本そのもので、対面の「酒菜」のなんちゃって日本食とは、雲泥を通り越して、「雲糞の差」がある。
尤もその分、日本円換算で1500円ほどの出費はやむを得ない。
この日の席は、三階最前列。
劇場の構造が馬蹄形だし、目の前の壁が結構高いので、席が少しでも中心をずれると、最前列でも死角ができる。
身を乗り出したくなるが、そうすると後部座席の人が見にくくなる。
マァ、何が何でも全てを見たいほどのファンでもないので、少々見えない部分があっても、全然不満はないが。
バレエは、各々が30分ほどの三部構成。
一部は、見習い中のプロ初年兵が躍る。
やっぱり全員が、ビッシリとは揃っていない。
これを見ると、北朝鮮のマスゲームの完成度は凄いことが分かるが、独裁国家でロボット集団のような踊りを見るより、失敗しても人間的な感じが伝わって、「次、頑張れヨ」と声をかけたくなる。
二部は、前衛バレエ。
迫力は伝わってくるが、何の意味だかは分からない。
しかし終わった後は、万雷の拍手が鳴りやまなかった。
最後が、この日のトリ、「椿姫」。
オペラですっかり有名な演目だが、ストーリーは若干違うようだ。
プリマドンナは、きっと有名なバレリーナなのだろう、やや小柄だが、やはり終演後は拍手喝采だった。
午後9時15分に終了。
ホテルに帰還後は、風呂に入って、すぐに就寝。
ウィーンの日程はすべて完了、明日はポルトガルのリスボンへ向かう。
ポルトガルは初めての訪問だ。