今まで雲一つないスペインの青空を見慣れていたが、イギリスの朝は肌寒い。
朝の気温は15度しかないので、ここでは全員、当たり前にセーターやジャケットを着ている。
スペインでは短パン、半袖シャツの常用してきた僕だが、流石にイギリスでは長ズボン、長袖で朝食を食べに行った。
ロンドン観光の初日は、夜のミュージカル「マンマ・ミーア」鑑賞まで特段の予定がない。
そこで嫁の発案で、ウィンブルドンの全英オープンに行こうとなった。
無論、チケットがないのだから、試合の観戦は無理。
しかし、ウィンブルドンの近くに行けば、少なくとも全英オープンの雰囲気くらいは味わうことができるのでは.........
そんな甘っちょろい思惑で、地下鉄を乗り継ぎ、会場近くのサウスフィールド駅まで。
我々が乗り込んだグロスターロード駅の案内板に、この駅名の横に、誰かがマジックで「TENNISS」と落書きしていた。
悪戯だけど、愛敬がある。
地下鉄は、テニス会場に向かう観客で結構混んでいたが、サウスフィールド駅を降りると、警備員の道案内の中、興奮気味の観客が足早に会場を目指して歩いているので、一気に全英オープンムードで一杯になる。
無論、ビッグイベント開催の際には必ずいる、「余ったチケット買うよ」と連呼しているオジサンも、駅前で声をからしていた。
会場に進んでいくと、「チケットのない人はこちら」みたいな看板があるので、そっちに入ったら、そこには千人を遥かに超す連中が並んでいる。
入り口で、厚手で立派なパンフレットを配っているので貰ったら、「A GUIDE TO QUEUEING」であり、要はチケット購入待ちの列の並び方指南書だった。
列の一番手前二列は、テントが張られていて、こちらは明日用の列。
当日券は、三列目からで、列ごとにK3から始まる小さな看板があり、そこにおよそ200人が列になっている。
僕らが到着した時間では、K8に並べと指示された。
長蛇の列とはこのことで、係員に「どれほど時間がかかるの?」と聞くと、肩をすくめて「分からないけど、長時間カナ?」「だけど、並ぶと見ることができると思うよ」と答えられた。
無論、そんなことはパス。
そのままセンターコート横まで歩き、記念写真を撮影し、帰りはそのまま歩いて、次の駅「ウィンブルドンパーク駅」から乗車しようとしたのが大間違い。
行けども行けども、駅に着かない。
例によって、何度も道を尋ねながら、30分ほど歩いたところに小さな駅があった。
ウィンブルドンテニスのこの時期は、テニスファンが世界中から押し掛ける。
町全体がこのイベントで盛り上がっていて、道路には観客が安全に横断できるよう、臨時で舗装を作るための係員が待機していた。
かなり離れた場所でも、駐車料金が28ポンドもするのだから、地元への経済効果も大きいが、車で観戦に来る客も引きも切らずで、やはり入場門から列を作っている。
これを見ただけで、ウィンブルドンテニスを観戦した気分になり、ホテルに戻る。
昼食は、ホテルから徒歩5分くらいのタイレストラン「THAI TASTE」へ。
美味いが、夫婦でシェアしても食べきれないほどのボリュームだし、何よりも二人で50ポンド以上は、タ・カ・イ!
ホテルで昼寝をした後、印象派画家の絵が多く展示されているCOURTAULD MUSEUMへ。
ところが、地図に強いはずの妻がコベントガーデン駅からの方向を間違い、まるで逆に進んだので全く辿り着かない。
ホテルで借りた道案内用スマホと、またまたすれ違う人に聞きまくりで、ヤットコサ、美術館に着いたが、何と無情にも9月末まで閉館。
しばらくは立ち直れず、すぐ傍のサマセットハウスで一休み。
ここはWifiが使えたので、暇潰しには最適だった。
昼のタイ料理が重たかった所為か、食欲がないので夕食はパス。
ノベッロ劇場で7時45分開演の、ミュージカル「マンマ・ミーヤ」を鑑賞。
最初は五分程度の入りだったが、開演直前にはほとんどの席が埋まっていた。
劇の内容は映画で知っていたが、流石に素晴らしい歌手ばかりで、10時半のアンコールまで、劇に見入った。
観客もノリノリで、最後のカーテンコールサービスでは、歌手と一緒に踊っている人が多くいた。
帰路の地下鉄で、前の老夫婦がもたついていたので、発車間際で乗車できた。
途端に列車が動き出したので、大きく後退りしたら、前の優先席に座っていた若い女性が、席を変わってくれた。
韓国人みたいな顔だったが、席を譲るようなやさしい女性なので、韓国嫌いな僕でも降りる時にキチンとお礼を言った。
しかしあの女性から見たら、優先席を譲るような対象になっているのが、ちょっとどころではなく、大いにショック。