僕はその時、心の中で春日八郎の名曲「別れの一本杉」を歌っていた。
ラグビーW杯で快進撃をしてきたジャパンが、準々決勝で南アに負けた。
しかも完敗。
見ていて、勝てると一度も思えなかったほど、木っ端みじんにやられた。
南アは、今までのグループリーグで戦ってきたどの国よりも強かった。
しかも、桁違いの強さだった。
アイルランドが強いとか、スコットランドも強豪とか思ってきたが、南アに比べるとまるで大したことはなかった。
グループリーグでは各国に通じたスクラムなのに、逆に南アに押しまくられる。
モールも、押されると、止めきれない。
止めは、日本の代名詞のようだった「華麗な攻撃」が、全く通用しないことだ。
福岡、松島がボールを持つと大歓声が上がるが、次の瞬間に南アにタックルを食らう。
だから、南アのディフェンス陣を突破できない。
今回のW杯は、結構熱心に観戦したので、ラグビーが5mラインからトライに至るまでの攻防戦の面白さを知った。
ここでの押し合いへし合いこそ、ラグビーの醍醐味で、見ている方も疲れ果てる。
しかし昨晩のジャパンの攻撃は、この5mラインをほとんど超えることはなかった。
トライを可能性は、ほぼ皆無だったのだ。
正直に言うと、戦う前から懸念があった。
ジャパンの最大目標は、グループリーグ突破だったし、それは達成できた。
ジャパンにはある種の達成感があっただろうし、ホスト国としての責任も果たした。
絶対に負けられなかったグループリーグ戦に比べれば、準々決勝のモチベーションは今一歩だっただろう。
だから内心では、「ここまでかな」と思わないでもなかった。
しかしそこは、四年前に奇跡を起こした対戦国で、リーチ主将も「勝てる相手」と言うものだから、ひょっとしてと、根拠もない淡い期待感があった。
ところが、南アが強すぎた。
「後半戦はスタミナに勝る日本が逆襲」などと取らぬ狸だったが、逆に後半はもっと圧倒されてしまった。
マァ、負けるなら、あそこまで徹底的にやられた方が、気持ちが吹っ切れる。
準々決勝の他三試合も見たが、ニュージーランドの強さは南アよりも上だ。
今のジャパンは、この二国には勝てるチャンスはない。
要は、準々決勝の相手が悪かった。
しかし、ウェールズ、オーストラリア、フランスなら、かなりの確率で勝てる。
イングランドなら、いい勝負だ。
アイルランドには、実際に勝った。
ジャパンは、現在のワールドランキングが6位にまで上がった。
世界には化け物みたいな国が二つあるが、3位まではいける。
だから次のW杯では、更にワンステップ挙げて、準決勝進出を目標に応援しよう。
その間、今まで見たこともないトップリーグや世界のラグビーリーグに注目するぞ。
昨晩で、「プロの俄かラグビーファン」は卒業だ。
今日からは、「プロのラグビーーファン」だ。