1か月半に亘った、ラグビーワールドカップが終わった。
結果は、南アの優勝。
昨日のイングランド対南アの決勝戦は、渡世の義理で南アを応援していたので、結果には万々歳だ。
日本が準々決勝で敗退した後は急激に興味を失うと思っていたが、実は全試合を見た。
プール戦もまた、再放送で観戦したので、恐らくは全試合を見たことになる。
今までほとんどラグビーには関心がなかったのに、何という変身ぶりだろう。
8月までの自分には、考えられない事態だ。
今回のW杯が、日本でここまで盛り上がった原因は、偏に全日本の健闘だ。
世界レベルのラグビーを目の当たりにすると、そのレベルの高さに驚くし、感動する。
しかし、主催国の日本が、その世界の強国に戦いを挑み、あまつさえ打ち負かしてしまうとなると、興奮の度合いが違ってくる。
日本は、さすがに準々決勝では、優勝国、南アには鎧袖一触で負けてしまった。
しかし、W杯前は世界ランク一位だったアイルランドや、強国、スコットランドに完勝した時は、日本中が熱狂の渦奮に巻き込まれた。
実際にそんな光景を目撃できるとは、何と幸せなことだろう。
サンキュー、全日本!
今回のW杯では、途中で超大型台風が三連発で襲来し、若干スケジュールが変更されたが、それ以外は何一つトラブルがなかった。
警備も大変だっただろうし、参加国を受け入れた関係者の様々な苦労も、2019日本ワールドカップの大成功で報われた。
それだけに、準優勝に終わったイングランドの中に、銀メダルを拒否した選手がいたことで、画竜点睛を欠く結果になったことが大変残念だ。
イングランドは「不愉快な敗者」と、世界中で批判が起きているらしい。
しかし、僕は思うのだが、同じことを南アがやったとしたら、蜂の巣をつついたような大騒ぎになったに違いない。
イングランドの場合、少数ではあるが、「選手の気持ちは分かる」と擁護する声すらあるらしいが、これはラグビーファンの中に、ラグビー発祥の地、イングランドへの尊敬の念があるからだろう。
今回のW杯を見ていて、ラグビーってリスペクトのスポーツだと思い至った。
僕のようなルールに不案内な「プロの俄かファン」にも、ラグビーは楽しめるが、もうちょっとルールが分かればと、残念な気持ちになることも多かった。
特に、トライを巡るせめぎ合いが一番緊張する場面だが、そこで審判がペナルティを取ると、局面が一気に、且つ決定的に動く。
そのペナルティの中身が、遠目で見ていると、何が何だか分からない。
しかしここで驚くのは、その結果、明らかに不利になったチームの選手が、審判に文句を言わないのだ。
サッカーだと、こうはいかない。
先ず選手が、審判相手に大文句を垂れる。
ベンチでは監督が、「どこ見とるンジャ、ワレェ!」とばかりに、審判を罵る。
野球も一緒だ。
年に数回は、審判に暴言を吐いて、退場処分を食らう監督が現れる。
ラグビーの審判だけは完全無欠などあり得ないので、結構誤審もあるはずだ。
しかし、審判に絶対服従なのは、誤審も含めて、選手が審判をリスペクトしているからに違いないのだ。
そもそもヘッドコーチは観客席にいるので、審判に文句の言いようがない。
選手同士も、リスペクト感にあふれている。
接触プレイが続く肉弾戦なので、当然アツくなり、胸ぐらをつかみ合うようなシーンはあるが、試合が終われば、見事にノーサイドになる。
一方のサッカーは、二年前のACL浦和対済州戦で、試合終了後に韓国選手が浦和の槙野を追いかけまわした。
中国の成都で行われたバンダカップで優勝した韓国は、優勝カップを踏みつけ、放尿する格好まで仕出かした。
こんなことは、ラグビーでは絶対に起き得ない。
観客も、お互いをリスペクトしている。
サッカーや野球では、各チームの応援団は見事に区分けされているが、ラグビーでは敵味方のジャージーを着た観客が、並んで座り応援している。
そこで、ファン同士の喧嘩になったなど、寡聞にして知らない。
そして先に述べたように、ラグビー発祥の国へのリスペクトもある。
今回のW杯に参加国の中に、イングランド、スコットランド、アイルランド、ウエールズがある。
僕に言わせれば、これはおかしい。
これがOKなら、日本は北海道、本州、四国、九州の四地区が出場してもいいはずだ。
しかし、ラグビーW杯で、そんなことが問題視されたことはない。
無論、この四か国が一緒になれば、無茶苦茶に強いチームができてしまうかもしれないが、これが許されるのは、やはりイギリスへのリスペクトがあるのだろう。
とにかく、ラグビーW杯は面白かった。
有り難いことに、このW杯で大活躍した外国選手の多くが、来年のトップリーグに参加するらしい。
こうなれば、トップリーグのファンになり、四年後のパリ大会までに「プロの俄かファン」を卒業しなければならない。
来年からは、トップリーグに注目するぞ!