昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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病院の人間模様

今回はわずか二泊三日の入院だったが、 病院には様々な人間模様があった。

 

最大のハイライトは、隣の爺さん。

患者にしては珍しく、看護婦だけでなく、医者に対しても悪態をつく。

普通なら、患者は医者に自分の命の全てを預けているので、どうしても下手に出る。

特に担当医に対しては、相手が自分よりもはるかに年下でも「先生」呼ばわりするし、敬語を使う。

しかし隣の爺さんは、口調が全て攻撃的で挑戦的だし、医者を「オマエ」呼ばわりして怒鳴りつけていた。

かと言って、仕事で功成り名を遂げ、威張りまくっていた人とは絶対に思えない。

病院の説得、制止を振り切り、自己判断で退院してしまったが、家族が迎えに来ることもなかった。

インスリンを毎日注射することも怪し気だし、今後の通院手段を聞かれると、「自転車で来る」と答えていたが、病院は自宅からは15㎞以上離れている。

糖尿病で緊急入院した患者が、この界隈でも一番交通量の多い道路を、自転車通院などできるのだろうか。

余計なお世話ながら、気になる爺さんだ。

 

後の四人の爺さんたちは、実に穏やかな性格のようで、誰も一日中殆ど口を利かない。

一日中悪態をついている爺さんも珍しいが、一日中口を利かない爺さんも珍しい。

こちらは毎日必ず家族の誰かが見舞いに来て、あれこれ世話を焼いているが、嫁さんに対しても、「ア~」とか「ウン」とかの返事しかしない。

 

僕なんかは、嫁が見舞いに来ると、周囲が呆れるほどベラベラと雑談を繰り返すので、我が家とはまるで好対照だ。

こんな爺さんでも、看護師との退院打合せでは、珍しく「一日も早く」と、退院を熱望していた。

殆ど沈黙している人ばかりだった中で、僕が入院中聞いた唯一に近い肉声の台詞だったが、病院に長居したい人などいないモノだ。

 

こんな患者を世話する看護婦の重労働振りも、入院して理解できた。

患者はフラストレーションがたまると、どうしても看護婦に八つ当たりする。

看護婦も慣れたもので、適当にいなしているが、それでも他人から抗議を繰り返されると不愉快な思いになるだろう。

しかも深夜も含めて一日中、誰かが患者の様子を監視していなければならない。

僕の場合は、深夜3時~4時くらいに担当看護婦が、点滴を取り替える必要があった。

これを間違えたり、怠ったりすると、最悪は命の危険もあるので、気が抜けない。

 

患者の中には、自分で下の世話ができない人も増えている。

最早、恥も外聞も構っていられない患者に対して、笑顔を交えながら、オムツを取り替えてくれる看護婦には、いくら感謝しても足りない。

それでも患者が、看護婦の働きに満足するケースは少ない。 

そんな激務を、シフトを組みながら、連日繰り返しているのだから、傍から見ても大変な労働環境なのが見て取れる。

ナイチンゲールが世界の偉人と称賛された時代から、すっかり様変わりして、今の看護婦は、「きつい、汚い、危険」の3K職場で働いている。

 

現代は、深刻な人手不足が続いている、

果たして日本人の若者は、看護婦や看護師の仕事を選択するのだろうか。

 

僕は、移民を増やす政策には反対の意見を持っている。

だが、今後ますます老人が増え、その老人を介護する側は人手不足となると、人件費が高騰し、その結果、金銭的理由から介護を受けられなくなる老人が増えてしまう。

だからと言って、外国人労働力に頼ると、治安が悪化するし、低所得層の職場を巡る競争が激化して、ナショナリズムが台頭する。

 

正解がない無間地獄のような設問だが、介護や看護の職場は、早晩外国人の労働力が必要になるに違いない。

勿論、その外国人に、日本人介護士や看護婦と同様の献身的なサービスは期待できないから、質的低下は避けられないが、背に腹は代えられない。

そんな時代が間近い。

入院すると、この日本社会が抱える矛盾点も発見するものだ。