長らく現役で仕事をしていた頃、職場と家庭で気を付けていたことがある。
それは、その両方を、常に「話題と笑いに溢れた場所」にすることだ。
仕事だから山あり、谷あり。
と言うより、むしろ山の場面は一瞬で、後は谷底で悩んでいることが多かった。
同僚と休日出勤して、打開策を講じたことも多々ある。
世の中が休息日なのに、休み返上で働くのだから面白いはずがない。
仕事中は侃々諤々、口角泡を飛ばす激論になる。
そんな時でも、最後は冗談をかまして、全員が必ず笑顔で帰宅することを心掛けた。
普段の職場でも、議論は原則オープン。
一見すると喧嘩腰のようだが、当事者同士が真剣だと、いくら怒声が入り乱れても、周囲はパワハラなどとは思わない。
ワイワイやり合っていると、そのうちに笑いを取るネタも飛び出す。
そんなことで、冗談に溢れた職場になっていったが、その分、セクハラムードを心配しなければならないほどだった。
家庭でも、基本的に一緒だ。
家にいる間は、妻とできるだけ多く会話するように努めた。
その為には、夫婦で共通の話題がないといけない。
僕は職場の話は家庭では全くやらない方だったので、概ね妻の話を聞くことになる。
しかし一方的に妻が話すばかりだと、話す側も自分の話への手応えを感じないし、聞く方もいつの間にか退屈してくる。
だから、適当な相槌がないと、会話が長続きしない。
その為には、妻は日頃、何に興味を持っているかを知っておかないとマズいし、そのネタに対して、最低限の知識がないとついていけない。
例えば、自分は見るチャンスがなくても、妻がNHK朝ドラを見ているなら、出演者くらいを知っているだけで、話が弾んでくるものだ。
結局ここでも、夫婦間のコミュニケーションが重要になってくる。
また相槌や質問で、妻が笑い転げるような小ネタを挟むことも工夫した。
この部分は、夫婦だけでしか通用しない、定番のネタがある。
吉本新喜劇のギャグのようなものだ。
吉本新喜劇の喜劇役者は、いつも全く変わらないギャグを繰り出し、観客はそのギャグが分かり切っていても、都度大受けして拍手する。
何度も何度も繰り返すことで、むしろ、そのマンネリギャグが飛び出す瞬間を、心待ちにすらしている。
我が家も、この状況に近い。
お陰で、我が家夫婦は、いつも話しているし、いつも笑い合っている。
マンネリを楽しむ心境でいると、傍目には、仲の良い夫婦に映るものらしい。
家庭も職場も、良いことばかりではない。
むしろ、年齢と共に、苦労する場面が増えてくる。
それを「話題と笑顔が絶えない」環境にするよう努力することで、自然と克服してきたように思う。
コミュニケーションと笑顔は、人生を豊かにする有力な手段だ。