正月は、今年一年の経済動向を占う番組が多い。
しかし、こんな予想が当たったためしがない。
何故なら、経済学とは、終わったことの解説は得意でも、今後の成り行きなど全く分からない学問だからだ。
よって、大半の評論家、学者は、「今年は厳しい一年になる」としか言わない。
そう言っておけば、結果が当たって厳しい一年だったら「ホラやっぱり言った通りだった」と自慢できるし、外れて好景気になっても、その時は誰もが浮かれていて、外れた予想への批判などないからだ。
経済番組と、お笑いタレントが出ずっぱりの番組は正月の恒例だが、実はこれほどくだらないモノはない。
そんな中でも、アベノミクスは、安倍政権の政策の肝なので、「昨年の振り返りと今年の予想」番組で、取り上げられることが多い。
そしてその大半は、「アベノミクスは失敗だ」であり、比較的好意的見方でも「アベノミクスが上手くいっていない部分がある」との指摘だ。
一番顕著なのは、昨年10月の消費税2%アップに対する批判だ。
株価は安定しているし、景況感も悪くはないはずだが、増税が景気を腰折れさせるので今年一年の見通しが暗いと主張する学者の、アベノミクス批判の根拠となっている。
この指摘は、間違ってはいないが、さりとて正解でもない。
何故なら、あらゆる政策の中で、トランプのジョーカーやスペードのエースみたいな働きをするものは、絶対にありえないからだ。
アベノミクスを端的に言えば、インフレ政策だ。
無論、ハイパーインフレの恐ろしさは、経済政策を失敗した国々で実証済みなので、インフレと言っても2%程度をイメージしている。
アベノミクスを批判する人たちは、この2%が達成されていないと攻撃している。
しかしもしも、2%インフレが達成出来ていたら、今度は、この結果で貧富の格差が拡大したと批判するに違いない。
経済に、魔法の処方箋はない。
何かを達成すれば、必ずその副作用が発生する。
アベノミクスも然りで、消費税を上げ、物価を上げながら、景気を穏やかに良くしていく政策なので、その動きに乗り遅れると、落ちこぼれ側になってしまう。
アベノミクスは、一面では、間違いなく若者の雇用を大幅に拡大した。
民主党政権までの日本は、就職氷河期で、若者は地獄の就職活動に明け暮れていた。
ところが今の就職環境は、極端なまでの売り手市場に変わり、むしろ労働力確保の方が大問題になっている。
中小企業では移民を拡大するべきとまでなっているのだから、世の中の変化は激しい。
僕はリタイア族なので、インフレは困る。
我が儘を言えば、年金はそのままで、むしろデフレの方が有難い。
だから、第二次安部政権については、外交は支持しているが、アベノミクスに対しては、一貫して反対している。
しかしこれは、全くの自分勝手な意見だとも理解している。
産業界にとっては、少しずつ物価が上がり、それに応じて事業が拡大する方が有難い。
だからこそ、株価も安定的にアップしているのだ。
僕のような年金族は、安倍政権の関心の対象からは外れているのだ。
こう言うと必ず、「それは違う」との反対意見が出てくる。
「既に株価は破綻しているが、日銀の大幅介入で見せかけで上がっているに過ぎないし、アベノミクスは大失政だ」との主張だ。
これもまた、どこにスポットを当てて、アベノミクスを論じるかの観点の差だ。
繰り返すが、全てが上手くいく経済政策などない。
だから経済評論家や学者の意見など、わざわざ時間を取って見たり聞いたりする必要などない。