昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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記憶力

僕は自分では、記憶力がある方だと思っていた。

ところが結婚以来、度々、妻の記憶力に尻尾をまくことが起きてきた。

そこで、僕と妻と言う実に狭い世界からだけの判断で恐縮だが、記憶力に関しては二種類あるのではと思い至った。

 

一つは、写真に撮るような記憶力で、これは妻の圧勝だ。

将棋の世界では知らない人がいないほどの大山康晴名人は、電線に留まっている雀の数を一瞬で覚えてしまう能力があったらしい。

一目千手とも言われ、全盛時代は誰が歯向かっても勝てない、盤石の強さを誇った大山名人の将棋の先読みは、こんな能力に裏打ちされていたと聞いたことがある。

かなりスケールは小さいが、例えば我が妻も、この記憶能力が極めて高い。

オペラの世界に、アニータ・ラチヴェリシュヴィリと言うソプラノ歌手がいる。

僕は、何度聞いてもこの名前を覚えられない。

と言うよりも、最初から覚える気にならない。

ところが妻は、この名前を一度聞くと、即座に覚えてしまう。

外国の地名も然りで、ドイツ最高峰のツークシュビッツェ山への登山口に、ガルミッシュ・パルテンキルヘン駅がある。

我々夫婦は、この町に二泊しているが、僕はこの駅名を全く覚えられなかった。

面倒臭いから、ガルミッシュ駅、もしくはガル駅と省略してしまう。

しかし妻は、フルネームで覚えていて、即座に駅名が出てくる。

 

一方「あの時、彼はこんなことを話した」みたいな記憶力では、僕の方が勝っている。

僕は、発言した本人が全く忘れているような話題も、発言内容から、その背景まで、実によく覚えている。

例えば先のガルミッシュ・パルテンキルヘン駅だが、僕は駅名は覚えないが、その駅前のアジア料理屋で食べたタイ料理の内容や、店の女主人から「Are you Vietnamese?」と質問され、憤然と「No! We're Japanese.」と答えたことなど、実に臨場感たっぷりに振り返ることができる。

これは同じ記憶力でも、録画ビデオのような覚え方なのだろう。

 

僕は度々、話し相手から「あなたは、そんなことまでよく覚えているねぇ」と感心されるが、ほとんど覚えるに値しないようなくだらないことばかりなので、この記憶力が役に立ったとの実感はない。

記憶力の容量が限られているのなら、くだらないモノは削除する方が良い。

妻の方も、ヤヤコシイ外国名を即座に言えることに驚く人は多いが、だから得をしたことは少ないはずだ。

 

我々夫婦は、記憶力に関しては勝手に自画自賛しているが、各々の人生で、どちらの記憶力が必要なのか、あるいはより有効なのかは分かっていない。