現役時代の僕は、早起きで必ず朝食をとり、しかも出社時間が滅茶苦茶に早かった。
よって妻は、朝5時半には朝食を用意しておかなければならなかった。
妻も大変だったと思うが、これが我が家の稼ぎになると思うと、我慢もできたようだ。
僕がリタイアした後は、妻はこの早朝の朝食作りの苦行からは解放されたが、それでも亭主が必ず朝食を食べる習慣は変わらない。
その為前夜に亭主が朝食べるサラダを作って、冷蔵庫に用意しておかないといけない。
また亭主が現役の頃は、休日以外は会社に出かけているので、自分だけの昼食なら、あり合わせで済ませることができる。
しかし今は毎日、稼ぎのなくなった亭主が、家に居座り続けている。
そうすると、昼飯もまた何かを作らないといけなくなった。
そしと夕食ともなると、息子も帰宅してくるので、毎日嗜好を変えたものを準備することが必要になる。
我が妻は、料理は好きだし上手い方だと思うが、一年365日、ろくでなしの亭主と、家の経済にはほとんど寄与しない息子のために、三度三度の食事を作り続けることが大きな精神的な負担になっていのは、如何に鈍感な僕でも理解できる。
主婦の仕事は、料理だけではない。
先ずは、連日の洗濯がある。
そこに置かれているものを着用し、着古しは脱ぎっぱなしの亭主に比べ、妻の仕事は、それを集めて洗濯機に放り込むことから始まる。
洗濯機の普及で今は力仕事ではなくなったが、それでも洗濯物を干し、乾いた頃に取り込む作業が待ち受けている。
同時に、家じゅうの掃除もマストで、掃除機をかけなければならない。
今ではルンバと言う優れモノが出現し、健気に走り回って掃除するが、それでも隅々は改めて、掃除機をかけたりダスキンで残ったゴミをぬぐい取る。
一週間に三回は、ゴミ出し作業まである。
生ゴミは何曜日、資源ゴミは何曜日と細かい決まりごとがあり、しかも出したゴミがネットからはみ出してはいけない。
主婦の仕事は、息を抜く暇がない。
そんな仕事を毎日やっていると、絶対にストレスが溜まるはずだ。
ところが世間の主婦たちは、平然として、こんな作業をこなしている。
これは、主婦のノウハウとして、自然と適度な手抜き、息抜きの方法が確立できているからだと思われる。
ところが亭主が引退すると、そんな気ままな生き方ができない。
更に最近は、武漢ウィルスの所為で、自宅待機の会社員が激増している。
普段なら家にいるはずのない輩が、そこにいるだけで不満が募るものだ。
多くの家で、夫婦喧嘩が絶えない状況なのも、分かる気がする。
これを避けるのはただ一つ、本来ならそこにいないはずの男性側が、家の真の主の主婦に対して、徹底的にゴマを摺ることに尽きる。
具体的方法は簡単で、自分でもやれることは全部協力することだ。
例えば、終わった洗濯物を、物干し場まで持っていく。
力仕事のゴミ出しや風呂掃除は、積極的に担当する。
食後の食器類も、洗い場まで持っていく。
そして最も大事なことは、日頃から常々、感謝の言葉を忘れない。
その程度なら、妙なプライドさえ捨てれば、大した負担ではない。
それで主婦の機嫌が良くなれば、こんなに安上がりで効果的な投資はないはずだ。