引きこもりが続くと、ストレスが溜まるものらしい。
我が家の嫁がそうだ。
僕は元々超ズボラな性格なので、ずっと家にいても何の痛痒もない。
しかし嫁の方は、毎日必ず小一時間は外出したいようだ。
そこでご相伴に預かり、ヒョコヒョコと嫁について散歩している。
その散歩コースの途中に、某大学運動部の練習場がある。
ご多分に漏れずそこは、このところズッと閑散とした開店休業状態だったが、ここに来て少々様子が変わってきた。
部員が、各々距離を取りながら、走り込み練習を始めたのだ。
そうこうしているうちに、昨日からは、集団走の練習までやり始めた。
どう見てもこれは、三密練習だ。
そんな光景をSNSでアップしたら、地元のオジサンから「時節柄、練習しているのは内緒にした方が」とのコメントが入った。
オイオイ、いくら何でも心配のし過ぎだろう。
先ず今の時代、一億総記者の状態なので、何かあればSNSで情報交換される。
そんな社会になったので、内緒ごとは無理だ。
しかも当事者たちも、あれだけ堂々としている以上、人目を避けてコソコソ練習する積りなどあり得ない。
当然ながら事前に周到に準備し、学校当局とも連絡の上で、練習を再開したはずだ。
仮にもしも彼らが、コッソリ練習を再開したのなら、緊急事態で外出自粛が続いている現在では、それは不適切な行動になるので、むしろ早急にストップしないといけない。
いずれにしても、彼らの練習再開を内緒にしておく必要はない。
しかし改めて、地元民の多くが、彼らの動向に気を配っていることが良く分かった。
わざわざコメントしてきた人も、運動部が練習を再開したことが世間にバレると糾弾されるかもしれないと怖れているからだ。
意識としては、運命共同体なのだ。
実は、この運動部は、長らくある大会の常連だったが、昨年、その権利を喪失した。
すると途端に、今年の受験生が激減したらしい。
その結果は、大学だけでなく、地元への経済的ダメージも大きくしてしまう。
地元にとっても、この運動部が大会で活躍できるか、あるいはその他大勢の一校でしかないのかは、決して他人事ではない。
運動部も、捲土重来を期して、今年は勝負の年になる。
監督やコーチ連中も、大会への参加資格を獲得し直さないとお払い箱になりかねない、
ところがそんな背水の陣の関係者にとって、武漢ウィルスのパンデミックが発生した。
三密を禁止されたことで、練習スケジュールに大きな支障をきたして困り果てたが、そうは言っても、体育会なので部員の健康を優先せざるを得ない。
早く全員で練習して来年に備えたいが、練習したくても、練習させられない。
そんなモヤモヤ感が、一か月以上も続いた。
しかし、何時までも武漢ウィルスの終息を待っていても、全く先行きが見えない。
さりとて何もしなければ、来年に好結果を残せるはずがない。
最早一刻の猶予もないほど追い込まれ、背に腹は代えられなくなった彼らは、ここに来て、腹を括って集団での練習再開を決めたのだろう。
正直言えば、「大丈夫かな?」との不安感はある。
もしもこの練習再開で、部員が武漢ウィルスに罹患したら、部そのものが致命的なダメージを受けるからだ。
勿論、当事者たちのそんな悩みは、部外者よりも遥かに大きいに違いない。
その狭間で、指導者も大学当局も、重大な最終結論を下したものと思われる。
地元民の一人としては、こんな運動部の決断と、部員の奮闘を応援したい。
それにしても、この地に流れ着いて30年。
すっかり地元と、一体化したものだ。