ケーブルテレビ放送番組には、「中国時代劇」と言うジャンルがある。
中国では、連続ドラマが大人気で、50話から80話を超える大作もある。
そんな作品の一つ、三国志では悪役と描かれる司馬仲達を主人公にしたドラマ「軍師連盟」を見て以降、連続中国ドラマを集中的に鑑賞して見た。
平均すると60話以上の連続ドラマを、もう既に20作品近くは見ただろう。
自分で言うのも何だが、かなりの中国ドラマ通だ。
同じような隣国だが、朝鮮は数千年に亘って中国の属国だったので、朝鮮人が誇りとするような人物はほとんどいない。
しかしその宗主国だった中国には、世界的に名の知れた歴史上の英雄たちが多数いる。
結果として、中国のドラマは、一応は歴史的史実に基づいて作られているが、韓国の場合、ほとんどのが荒唐無稽の脚色か創話となる。
たかがテレビドラマでも、その国の歴史が偲ばれる偲ばれるのが面白い。
その中国歴史ドラマの大半には、ある種の共通項がある。
・中国は、唯一絶対の皇帝が、全国、全権を掌握し支配する社会
・主人公は80%が女性で、男性の主役は極めて少数
・主人公は全員が、絶世の美人か眉目秀麗の若者
・絶世の美女が皇帝の寵愛を巡って、権謀術数を繰り返す
・頼りになるのは自分だけ、仲間はすぐ裏切る
・宮廷の宦官や宮女は、主人のためなら殺人も厭わない
・主役に重要なのが氏素性
・卑しい出自では、男女ともに出世に不利
・奴婢には人権などない
と、現在の国名、中華人民共和国の名が泣く、徹底的な階級社会が描かれる。
またストーリーは、
・美男美女の主人公には、あらゆる艱難辛苦が押し寄せる
・悪役はトコトン徹底的にワルで、主人公を追い詰めるためには手段を選ばない
・主役は、親友や周囲の協力で、一つずつやっとのことで危機を乗り越える
・しかし最終的では、一番良い人だったはずの親友が一番のワルと判明する
・主人公が、その親友をやっつけることでエンディング
と、全部が判を押したような定番となっている。
こんな決まりきった物語で、しかも人間の不平等さや、人権を軽視した番組が、なぜ現代中国で持て囃されているのだろう。
それは、今でも中国は、昔の身分差のある社会構造が継続しているからだ。
要は現代中国は、人民の共和制でもなければ、連邦制でもない。
ただただ、共産党委員長と言う絶対的な皇帝が全土、全人民を支配し導く社会でしかなく、これが秦の始皇帝以来の中国の伝統なのだ。
現在中国は、平等社会実現を謳った共産主義国家なので、表面的には人民は皆平等と定義されてはいる。
一応は、選挙も実施されていて、代議員による国政議論もあることにはなっている。
その共産主義には、世界中で共通している点がある、
それは、たった一人の絶対的指導者によって、組織が運営されている点だ。
これは、中国の皇帝と全く同じだ。
共産主義と、中国の統一王朝は、まるで瓜二つの構造となっている。
だから中国人は、知らず知らずのうちに。共産党の最高指導者を皇帝と見做している。
過去の王朝は、親子、家族間、いわゆる一族内で、皇帝の座を継承してきた。
昔と今の違いは、それまでは一族相伝の仕組みだったが、今の中国では、共産党内での主導権争いの結果、皇帝が選ばれるように変わっただけだ。
中国共産党の王朝と化した独裁国家中国の、初代皇帝が毛沢東、二代目皇帝は文化大革命の内乱を経て鄧小平、今上皇帝は習近平なのだ。
中国人は、自分たちが皇帝の支配下であることを、何ら不思議とも思わない。
出自による差別も中国人にすれば当たり前で、他国民から見れば差別そのものとしか思えない、都市戸籍と農民戸籍が共存することもごく自然に受け入れている。
こんな社会常識の中で、中国皇帝を巡るイザコザがドラマ化され高視聴率を稼ぐ。
世界第二位の経済大国になっても、今の中国は中世の王朝国家そのものだ。
たかがドラマだが、皇帝と言う絶対的存在や身分差別を認め、そこから成り上がるためには手段を選ばない、中国人のモノの考え方が潜んでいることが見て取れる。