小川淳也、49歳。
尤も民主党バブルだった2009年の選挙以外では、野党候補にありふれた、小選挙区では負けるが比例で復活する、ゾンビ議員でもある。
その小川が、テレビ出演でとんでもない発言をしたことが問題になっている。
「どういう人間かは、どういう生い立ち、どういう環境かに規定されるんですよ」
「叩き上げストーリーをもし作られているとしたら、それはちゃんと実情を見ないといけない」
特に最初のフレーズが問題で、「小川は差別主義者」の大合唱で炎上した。
さすがに小川は、「言葉足らずだった」と謝罪した。
しかし、生い立ちと環境で人間性が決まると考えていたのは事実なので、如何なる言い訳も虚しい。
差別主義者と言われても、仕方がない。
しかも小川はこのセリフを、橋下徹の眼前で披露している。
橋下は自ら被差別部落出身者をカミングアウトしているが、しかしそれでもいけしゃあしゃあと、こんな差別論理をひけらかされては、穏やかではいられない。
小川は幼稚なだけでなく、まるで無神経なオトコだと分かってしまう。
もしもこれが与党議員の発言ならば、マスコミは挙って「議員の資格なし、即刻議員辞職を」と大騒ぎするに違いない。
しかしいつものことながら、野党議員への追及は甘いし、今回も問題視すらされない。
結果として、野党議員は真摯な反省をしないので、いつも同様のミスを仕出かす。
マスコミの過保護、長年の持たれあいと腐れ縁は、実は野党議員の成長を促さないし、野党の信頼感につながらない。
改めて今回の小川淳也の言動から、日本の野党とマスコミの体たらくを痛感する。
それはそれとして、今回の小川発言は間違うことない、救いようのない差別発言だ。
だが、精一杯小川側に立って考えてみると、彼が言いたかったことは、二番目のフレーズにあると思い至る。
小川は、「菅義偉の苦労人伝説は疑わしい」と言いたいのだ。
そして野党政治家としての最初の仕事は、菅義偉の虚構を暴くことと思っているのだ。
それが、
・菅義偉の実家は、富裕な農家だった
・地縁血縁のない選挙区も、父親も町議だったので怪しい
・苦労人菅義偉は、選挙用に作られた虚構
との発言につながっている。
何をどう思おうと、それは小川の勝手だが、衆議院議員として菅義偉新首相に対する疑問がこんなレベルとは笑わせる。
はっきり言って、菅義偉が「集団就職ではなかった」とか、「裕福な農家を継ぎたくなかったのはおかしい」とかは、全く以てどうでもいいことだ。
そんな些末なことで、菅義偉内閣と戦おうとする野党議員の志の低さに呆れてしまう。
大事なのは、菅義偉が市会議員から国会議員に転身し、安倍政権で七年八か月間も官房長官を務めた中で行ってきた、政治家としての実績を問うことなのだ。
その点では、自民党総裁選が終わった翌日の「虎ノ門ニュース」に登場した、元北海道道議、小野寺まさるの菅義偉批判は秀逸だった。
この番組で小野寺は、アイヌ新法の欺瞞性を暴露し、その法案成立に果たした菅義偉の役割と、IR利権への菅義偉の関りを痛烈に批判した。
小野寺の指摘通りなら、菅義偉はかなりキナ臭さが漂う政治家であり、場合によっては北朝鮮チュチェ思想集団と利害が一致している可能性がある。
こんな重大な問題点が、保守系番組の「虎ノ門ニュース」で報道される。
これもまた、日本の野党とマスコミの怠慢を表す典型例だ。
小川淳也も、ガキみたいなイチャモンではなく、政策の矛盾点をついた菅義偉首相の批判をしないと、いつまでも比例復活がやっとの下っ端議員のままで終わる。
当方は、自民党新総裁として菅義偉が選ばれたことを大喜びしていた。
しかし、小野寺まさるの告発を知って以降は、新首相菅義偉に対して一抹どころか、かなり大きな不安感が芽生えている。