昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

日頃の思いや鬱憤を吐露!無礼千万なコメントは削除。

昨今のビジネス事情

昔の仕事仲間との飲み会で、東京都心へ出かけてみた。

前回東京に行ったのはいつだったか、思い出せないほど久しぶりだ。

 

夕方だったので電車は混んではいなかったが、乗客の全員がマスクを着用している。

わずかに三人の学生集団の話し声が聞こえるが、残りの乗客は全く無言。

ひたすらスマホを見つめているか、あるいは座禅のように目をつぶっている。

 

居酒屋に集まったのは、当方も含めて四人。

大坂では五人以上の飲み会は自粛要請らしいから、ギリギリの人数だ。

武漢肺炎対策の専門家会議で活躍中の尾身茂副座長は、飲み会でも「食べるときだけマスクを外し、喋る時はマスク着用」を薦めていた。

しかし、飲んだり食べたりマスクをつけたり、そんな面倒臭いことをやっている人は、もちろん一人としていない。

飲むほどに、そして食べるほどに、声は大きく、饒舌になり、いつの間にか武漢肺炎のことなどすっかり忘れて、思い出話に打ち興じていた。

 

当方を除くと、残りの三人は現役で働いている。

今の仕事ぶりを聞いてみると、異口同音に「半分出社、半分は自宅勤務」と言う。

関係者は全員集合で、顔色を見ながら、阿吽の呼吸で仕事を進めてきた当方には、そんな仕事のやり方のイメージが全く湧いてこない。

 

社内会議だけでなく、顧客との商談も電話会議をすることが大半で、そのせいで折衝時間が激減していると言う。

こちらもまた、商談は一時間を原則としていた当方には、エライ様変わりに映る。

当方の時代は、一時間のうちの50分は雑談に費やす。

そこで商談相手の顔色を窺いながら、残り10分で本題を切り出すタイミングを図る。

肝心要の本題については、勝ったような負けたような、微妙な結末に終わらせることが腕の見せ所だった。

 

ところが昨今のテレビ会議になると、余計なこと、無駄話をする余裕がない。

いきなり本題を話し始めるので、商談は長くて10分。

結論は簡潔明瞭になり、息遣いや鼻息の荒さなどが分からないから、相手が満足なのか不満なのかの判断はできなくなる。

今のビジネス環境は、その昔、自称「名うての企業戦士」だった当方など、全くお呼びではないほど変化している。

 

この歳になると、昔話のネタだけは豊富になる。

宴たけなわを過ぎても、いつまでも昔話が尽きない。

しかし二時間を過ぎると、店側から「ラストオーダー」を催促される。

客に長居されると、武漢肺炎感染リスクが高まるから、時間厳守を求められる。

と言うことで、三か月後の再会を約束して、この日はお開きとなった。

 

帰りは、後輩がタクシーを手配してくれた。

時節柄、贅沢は敵と一応は遠慮したが、今度はタクシー運転手から乗車を懇願され、酔っ払いにタクシーはありがたいので「ではお言葉に甘えて」となった。

久しぶりの長距離客を捕まえた運転手は、タクシー乗車のエチケットの「必ずマスク着用」にも「構いませんから気楽にどうぞ」と、すっかりご機嫌だった。

 

運転手は、今回の武漢肺炎の被害はリーマンショックを遥かに上回っていると言う。

リーマンの時には、人手には影響がなかったので、タクシーの乗客がたくさんいた。

しかし今は、本当に暇だと嘆く。

一旦感染者が減っていたのに、ここに来てまた武漢肺炎が勢いを増している。

飲み屋街には客足が戻って入るが、ビジネス街は半舷上陸が当たり前になっている。

このまま仕事のやり方が定着すると、オフィスビルの見直しも進むとみられる。

大手商社も、デスクの社員共有化で、必要スペースが30%以上減ったと聞く。

そうなると、大勢が一度に集まることが不可能不必要になり、その結果人が集まらないと、様々な都心の需要構造に変化が現れる。

 

武漢肺炎は、世界経済に壊滅的ダメージを与えたが、仮に一旦落ち着いても、その後の会社や会社員の在り方、更には我々の生きざまにまでも大きく影響しそうだ。