アメリカ大統領選は、日本の保守派を二分した。
ネット界隈は、どちらかと言えば「絶対にトランプは負けていない」と信じる連中の声が大きい。
彼らは、
・今回の大統領選挙では、民主党の大規模な不正があった
・その証拠は山ほどある
・それなのに、バイデン当選を認めるのは裏切り行為
と主張し、反対意見を絶対に認めない。
しかし、その肝心要の証拠が出てこない。
あるのは、「これが証拠だ!」と銘打ったネット情報だけだ。
残念ながら、その大半は信憑性が薄い。
そんな情報だけは、文字通りゴマンとある。
それを次々と刷り込まれると「不正があったに違いない」と確信することになる。
すると次の段階で「バイデン当選は不正選挙の結果だから、絶対に認められない」との理屈になる。
この連中に特徴的なのは、そもそも最初の段階での大規模不正が立証されていないことには、一切疑問を持たないことだ。
選挙直後からトランプ大統領とその周辺、トランプ弁護団は、不正選挙を糾弾し始め、裁判に訴えた。
しかしその判決は、ほぼ連戦連敗。
結果として、裁判で不正選挙は、全く認定されていない。
普通ならこの時点で、不正選挙はなかったと納得するはずだ。
そこで次に出てきたのが、裁判所は既に中国に買収済み理屈だ。
しかし、いくら中国が必死になっても、50を超える裁判所を悉く買収しているなんて、現実的ではない。
中国のスパイ工作は凄まじいかもしれないが、それでも一応はアメリカは民主主義国家だ。
もしも買収されたと疑われている裁判官がいたら、それまでの行動に疑わしい部分があっただろう。
しかも、今の司法界の中枢は、トランプ政権の四年間で選ばれた裁判官たちで構成されている。
それを中国が、一網打尽に買収していると考えるのは飛躍が過ぎる。
結局、「トランプは負けていない」とか「トランプが勝った」と言うのは、単なる確証バイアス、認知バイアスの所為なのだ。
一歩一歩、トランプが追い詰められ、その都度打つ手がなくなっているのが現実だが、それだと自分たちの予測が外れてしまう。
それは困るので「未だ終わっていない」とか「戦いは今から」とか、何とか時間稼ぎの理屈を考え出す。
それが
・共和党議員が別の選挙人登録をした
・ペンス副大統領が選挙人名簿受け取りを拒否する
・トランプが戒厳令を施行する
とかの荒唐無稽の筋書きだ。
本来なら、12月14日選挙人選定で片が付いたはずだが、こんな理屈で、1月6日が本当の勝負と言い出し、「この日には一大事件が勃発する」と、期待感を煽り立てる。
しかし断言するが、そんなことは起きない。
民主主義国家の副大統領ペンスは、粛々と選挙人名語を受け取る。
そして、1月20日のバイデン新大統領就任式へと進む。
それでもその場合の、こんな連中たちの言い分は、
・大統領就任では問題は片付かない
・不正選挙を暴き出すまで戦いは続く
と、あくまでバイデン大統領を認めないだろう。
実は新大統領に就任しても、バイデンは大問題を抱えての船出だ。
一つは、今回の大統領選挙が不正選挙ではなかったことの証明だ。
トランプに投票した74百万人の有権者が、選挙の正当性を納得しない限り、バイデンの言う「国民統合の政権運営」は不可能だ。
二つ目は、身内のスキャンダルだ。
こちらもまた、野党勢力には格好の攻撃材料になる。
三つめは、本人の健康問題だ。
ボクや認知症まで疑われているほどなので、任期満了は難しいとも言われている。
四つ目は、バイデンの公約では経済が立ち行かないことだ。
今回の選挙結果は、トランプにも共和党にも不幸な結末となった。
二年後も、共和党には負けられない選挙が続く。
その全てで捲土重来を果たし、四年後の大統領選で政権を奪回する。
それしか方法はない。
日本でも、証拠なしでモリカケ桜を追求した野党議員と、同じ体質の評論家が大量に表れた。
彼らは、絶対にトランプが勝ったと言い募っている。
ただその裏付けがないなら、単なる思い込みに過ぎず、新興宗教のように、教祖様の予言を無批判に信じて拡散しているに過ぎない。
百田に至っては、CIA長官が逮捕、グアンタナモ基地内に幽閉され取り調べを受けていると主張していた。
その場合の罪状は、民主党の選挙違反に関与の疑いのはずだ。
しかし、選挙違反の共犯者になる民主党に、長官を助ける動きが全くないことから、容易にガセネタと分かる。
こんなフェイク情報をタレ流すのは、評論家としても言論人としても失格だし、それを信じてバイデン逮捕を期待するのもバカバカしい。
今回のアメリカ大統領選は、保守勢力のそんな実態も炙り出した。
一部の日本の保守派もまた、野党と同様に幼稚な政治勢力だ。
民主主義が成長し、定着するには、まだまだ時間がかかるのだ。