僕は40年ほど前の二年間を除いて、愛知県民であったことはない。
だから当たり前に、県知事リコールの投票権などなかった。
しかし、愛知県のバックアップで開催された、あいちトリエンナーレについては、日本人として怒りを覚えた。
表現の自由を掲げた連中によって、昭和天皇のご真影が燃やされ、踏みにじられたフィルムが放送されていたのだ。
これは、絶対に許せないと思った。
だから、高須克弥院長や河村たかし名古屋市長が主唱した、大村秀章愛知県知事リコール運動には、陰ながらも応援していた。
月刊Hanadaの別冊本まで買い込んで、有志たちがリコール運動に至った思いを理解し、共有しようともした。
しかし残念ながら、責任者だった高須院長の病状が悪化し、且つ賛同者も必要な票数の半分しか集まらず、高須院長の一時中止宣言で、実質的にリコールに失敗して終結した。
これを聞いた時は、誠に残念な気持ちだった。
やはり愛知県では、トヨタやトヨタ労組が消極的だと、リコールのような大がかりな政治ムーブメントはうまくいかない。
またその後、大村県知事は津田大介やサヨクに対して融和的な面もあるが、県の経済活性化に適切な政策を実施していることも知った。
サヨクの跳梁跋扈を許したトリエンナーレは不愉快千万だが、リコール不成立が愛知県民の意思なら、仕方がないかと諦めていた。
そんなところに飛び込んできたのが「43万5千筆に及んだリコール署名の83%が不正だった」とのニュースだ。
これがなかなか、分かりにくい内容だ。
・不正の内容は、同一人物に掛かれたと疑われる署名が90%。
・選挙人名簿に登録されていない者の署名が48%
・選挙人名簿に登録されていない受任者が収集した署名が24%
三つの要因が重なっているものが多いのだろうが、そもそも36万2千筆が不正投票とは、到底信じられない。
この結果では、リコールに賛成した有効票は、必要票86万筆に対して、わずか7万筆だったことになる。
元々リコールに反対していた、共産党も含めた勢力は、ここを先途とばかりに「インチキだった」とリコール推進派を攻撃する。
反対派がこう動くのは当たり前に予想されるが、リコール推進派にとっても、さすがにこの数字は納得できない。
それはそうだろう。
憲政史上初めての県知事リコールを成立させようと、全員が一所懸命に努力した積りだったはずだ。
途中経過では、高須院長自ら「凄い勢いで運動が進んでいる」と、発破をかけていた。
虎ノ門ニュース出演者たちが、大挙して名古屋市に押しかけ、リコールを呼び掛けていたではないか。
情勢は楽観は許さないが、さりとて絶望的でもないと信じていた。
ところが実態は、わずかに有権者の10%未満の賛同しかなかった。
これじゃ「話しが違う」と、アタマにも来るはずだ。
責任者の高須院長も河村市長の態度も、煮え切らない。
確かにこの二人が、直接に不正を指示したのではないだろう。
恐らくは、リコール推進運動員が、思うに任せない票の集まりに焦って、不正に手を染めたと推測される。
高須院長は、自らの不正関与は否定して、リコール反対派がわざと不正票を紛れ込ませた可能性を指摘していた。
しかし百歩譲って、組織に忍び込んだ反対派が不正したとしても、リコール成立の必要票数には圧倒的に不足していた事実は変わらない。
また、集まったリコール票を選挙管理委員会に提出する前に、内容を調べなかったのかとの疑問も残る。
高須院長は、自分が集めたものはチェックしたと言っているが、そこには不正は皆無だったのか。
他では「集めた人に失礼に当たるので不正確認はしなかった」とのコメントもあるが、これもまた情けない言い訳だ。
結果としては、リコール運動そのものの信用を完全に失墜させ、日本を冒涜する催しに税金を投入することの是非も有耶無耶になった。
当然ながら、このような不始末の責任は、主催者で責任者の高須院長が、一番に負うべきだ。
だからこそ高須院長の誠実、且つウソ偽りのない説明が求められる。
仄聞する限りだが「不正ではない10万筆が自分を支持してくれた」発言などは、詭弁であり論理のすり替えだ。
またもう一人の責任者、河村たかし市長もまた「自分も被害者」などと開き直るのではなく、何故これほどの不正票が紛れ込んだのかを解明する責任がある。
大村県知事は「リコール不正署名は、民主主義の根幹を揺るがす」と発言した。
必要票の半分しか集まらずリコールが失敗しただけでなく、その大半が不正票とは、大村にとってはさぞや快哉を挙げたい思いだろう。
大村が嫌いな僕としては悔しさで一杯だが、今回の事態は、敵将大村にそんな思いをさせてもやむを得ない。
リコール推進派による事態の解明と、その発表が待たれる。