虎ノ門ニュースを楽しみにしていた時期がある。
偏向報道ばかりの地上波テレビの対抗で、保守派にとっては「目から鱗」情報が満載だったからだ。
但し、昨年末のアメリカ大統領選で、具体的証拠もなしで不正選挙と主張する、百田尚樹や有本香の出演する日には関心がなくなった。
そんな訳で今のところ、月曜日の田北真樹子と金曜日の武田邦彦、須田慎一郎が出演する日くらいしか見ない。
その金曜日の3月4日、須田慎一郎が「愛知県知事リコール不正」を特集として取り上げた。
実は、リコール運動と虎ノ門ニュースの関連は強い。
運動支援のために、百田、有本、武田以外に竹田恒泰も名古屋に乗り込んで、街頭運動や演説までしている。
また高須克弥自身が虎ノ門ニュースに出演して、リコールの正当性をアピールもした。
それだけに、リコール不正が判明した後、虎ノ門ニュース関連者が全員、知らぬ顔の半兵衛を決め込んだことに批判もあった。
百田に至っては、Twitterでラサール石井にこの件を揶揄された時「知らんがな」とリプライして物議を醸した。
そんな中で、番組を代表する形で、須田がこの問題を特集として取り上げたことには意味がある。
今後も取材を続け、その結果を発表するらしいが、昨日の放送を見た限り、その内容は隔靴掻痒の感が強い。
先ず須田の相方の武田邦彦は、虎ノ門ニュース側の当事者の一人だ。
番組の進行を見ても、放送内容について武田も含めて、入念に打ち合わせたことがバレバレなのだ。
しかも、今はこの番組を追放された上念司が、番組として、他の出演者の悪口を言わない暗黙のルールがあったと暴露している。
と言うことは、須田は百田、有本、竹田とも事前に放送内容を打ち合わせ、内容について了解を得ていることを意味する。
即ち、須田が取材を進めた結果は、虎ノ門ニュース出演者にとって不都合な結論にはならないのだ。
既に番組では、そんな前振りが須田の口から語られている。
須田は、今までの取材で明らかになった点として
・疑惑ではなく、既に警察が捜査中の事件
・リコール成立しないことが分かった後に不正署名に手を付けた
・費用負担を追えば、自ずと事件は解明されるはず
・組織的犯行ではなく、何人かの合議で実行された可能性がある
・今後、その点を調査取材をする
と話した。
今回のリコール不正に関心がある人なら、この発言にはある種の意図が隠されていることが分かる。
須田は暗に、日本維新の会の関与を仄めかしているのだ。
現時点までの情報では、リコールの会高須代表や応援団の河村たかし市長は、何も知らなかったと逃げきれるかもしれない。
しかし、佐賀県不正署名作業の発注者や、現地で指揮を執っていた維新の政治家は無傷で済むはずがない。
既にそれを見越して日本維新の会は、トカゲの尻尾切りを始めた。
次の衆議院選で愛知五区の維新の候補だったはずの田中孝博事務局長は、維新支部長辞任だけでなく、党籍まで離脱している。
他に警察の事情聴取を受けた、維新所属市会議員の存在も明らかだ。
この市議が、佐賀県の不正署名現場で陣頭指揮を執っていた人物だ。
こんな背景を知っていると、虎ノ門ニュースと須田慎一郎が描いている事件イメージとゴールも見えてくる。
・リコールの会を牛耳っていたのは維新から派遣された幹部連中
・愛知県で地盤が弱い維新が、リコール利用で知名度アップを図った
・リコールの会の金庫番情報も、維新が独占していた
・高須代表も河村市長も、何一つ知らされていなかった
・虎ノ門ニュース出演者は高須と河村に頼まれて応援した
・よって不正情報は寝耳に水
・報道機関としての道義的責任がある
・しかしこれほど稚拙な犯行は、予想だにできなかった
と結論付ける作戦だろう。
虎ノ門ニュースも出演者が言い逃れできる 絵が見つかったから、不正リコール問題を放送したと疑うのは、穿った見方だろうか。
武田は、リコールに厳しい制度は民主主異的ではないとか、マスコミがリコール運動を取り上げなかったと主張した。
しかしこれは、だからと言って不正が許される訳でもないし、制度に関してはイチャモンに過ぎない。
兎にも角にも、選挙と言う民主主義手続きで愛知県民に選ばれた知事を、任期途中でリコールしようとするのだから、選挙同様、若しくはそれ以上の手続きが必要なのは当たり前だ。
リコール手続きが煩雑なのと、今回のリコール不正事件は関係ない。
むしろ虎ノ門ニュース側は、応援したリコール運動に不正があったため、大村知事が認可した「あいちトリエンナーレ」を追認した結果になったことを、痛切に反省するべきなのだ。