昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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左遷された後輩へ

現役会社員の後輩から「この度、左遷されました」とメールが来た。

「偉くなりたい訳ではなかったが、左遷が発表された後の周囲の憐みの眼が辛い」らしい。

出来るだけ早いタイミングで仲間を集め、激励会を催すことにした。

 

彼は、仕事はできたが、直情径行。

歯に衣着せぬ、一本気のオトコだった。

後輩からは頼りにされていたが、反面、上司とは悉く大喧嘩をする。

相手構わず、正論でコテンパンにやっつけるモノだから、上司の方もとうとう堪忍袋の緒が切れたのだろう。

 

こんな尖ったキャラの持ち主だが、何故か僕とはウマがあった。

10年以上一緒の仕事をしたが、揉め事がなかった。

周囲も、彼のそれまでのキャリアと、その後の仕事ぶりから見ても、二人の関係は奇跡的にうまくいっていると不思議がっていた。

実は、僕の役割は楽なものだ。

結果は出すオトコなので、彼が仕事をやり易い環境さえ作れば良い。

彼の方も、僕があれこれ詮索せずに任せているので、信頼されていることが分かり、遣り甲斐もあったようだ。

 

その後の異動で別々の職場になったが、何かあると相談してくる。

細々と干渉されると、思う存分実力を発揮できた昔を懐かしがる。

そんな仕事ぶりがまた、直属上司に苦々しく見えたのかもしれない。

だから今回彼が左遷された遠因の一つに、昔の僕との関係があったのではと心配もしている。

しかし既に、人為異動は発表されている。

今更、裏技を使って反故にすると、却って事態を悪化させる。

 

ここは考え方で、左遷を良い経験にした方が良い。

実は僕も、同じような経験をしている。

長年心血を注いできた事業から、ある日突然お払い箱にされたが、この時は精神的にも、大きなダメージを受けた。

次の職場は初めて経験する分野だったが、そこで頑張るしかない。

やむを得ず真面目に勤めていたら、そこで様々な経験をすることができ、人間的にも大いに勉強になった。

 

更に、左遷されたことで、同じ境遇の同僚や後輩の悩み相談に乗る術も身に着いた。

健康そのものの人は、病気で悩む人の苦しさを理解できない。

同様に、順風満帆な会社生活を送ってきた人が、左遷された人を慰めるとイヤミになる。

しかし同じ境遇の経験者なら、その悔しさを親身になって聞くことができる。

 

しかも会社生活では、ごく一握りのエリート以外は、大半の人が挫折を感じながら仕事をしている。

圧倒的多数は、思うに任せないで仕事をしている人なのだ。

そんな人と悩みを共有すれば、会社員としての地位以上に、人間的な信頼を得ることができる。

左遷される方が良いと言うのは強がりだ。

しかし左遷されることで、得るモノもある。

 

以下は、後輩五人限定の「僕の仕事への考え」レポートの一節

挫折や苦労も財産

日経新聞最裏面の、「私の履歴書」を愛読する会社員は多い。

功成り名を遂げた有名人が、そこに至るまでの苦労話を披歴しているが、大半のストーリーは、運に恵まれたとか、周囲に助けられたとか、一見謙虚さを装っていて、「自分の実力が成功の原因」のような傲慢さは描かれない。

しかし基本的に自慢話であり、一か月に亘って延々と自慢話を続ける神経の持ち主が謙虚なはずがない。

世の中で稀な存在の成功者の、本来なら鼻白むような自慢話を有難がり、憧れ、少しでも自分の参考にしたいと思うよりも、自分の周囲にいる苦労や挫折した人から学ぶ点を見出す方が余程実践的で効果も大きい。

トルストイの名言「全ての幸福な家庭は互いに似ているが、不幸な家庭はそれぞれのやり方で不幸」のように、成功者の成功談はほとんどが一緒だが、苦労や挫折した人の経験は、それぞれに参考になる。

我々自身も成功よりも失敗の確率の方が高いのだから、困った状況を打開しようと必死に取組んでも、残念ながら志半ばで終わるとか、中途で大きな挫折を味わった人から学ぶべき点はたくさんある。

仕事の結果は努力に比例すると思うのは幻想で、実際は諸情勢に恵まれず本懐を遂げられなかった人たちの方が圧倒的多数だが、成功者に比べ、そのような人たちが発言し、教えてくれる場所は少ない。

だから常日頃、失敗談にも注意深く関心を持ち、自分の生き方や仕事のやり方の参考にする姿勢が大事だ。

会社員として、実際に自分への評価が意に添わぬ結果になり憤懣やるかたないことも有り得るが、例えそうなっても、その挫折感を乗り越え、その経験を無駄にしないように努力しなければならない。

企業においては、様々な場面で、様々に挫折感を抱きながら会社員生活を送っている人が多いが、そのような境遇の人に、共に寄り添い、親身になってアドバイスができるのは、実は自らも挫折した人だ。

健康な人は病気に悩む人の辛さが分からないので、「この程度で休むとは」と暴論を吐いたりするが、自分も病弱な人は、辛さを理解し心から優しく対応できるので、人として信頼される。

順風満帆な会社員が、失意の同僚や後輩を慰めるのは嫌味に聞こえるが、自らも不遇を囲った人なら、その時のむなしさを肌身で感じているので、心からの同情とアドバイスを送ることが出来る。

そこで得られる信頼は、会社員としてのランクや評価を遥かに上回るモノであり、豊かな人生観につながる。

挫折や苦労は、好んで求めるものではなく、経験しないに越したことはないが、やむを得ずそのような事態に陥った場合でも、考え方次第で視野が広がり、人間としても成長できる。

挫折や苦労もまた人生の財産と、前向きにとらえることだ。