愛知県知事リコール不正問題の捜査は、どうやら大詰めのようだ。
24日も、リコールの会事務所が地方自治法違反容疑で捜査された。
リコールの会の高須代表は「既にカラッポになっているはずで、捜査に驚いた」と語った。
事務所がもぬけの殻だとしても、警察の捜査上は、事務所部署などの位置関係を確認しなければならない。
既に一番の証拠になる不正署名の投票用紙は警察が押収している。
関係者の全員が、不正との関りを否定している。
しかし、リコール賛成票43万筆のうち、83%が不正署名だったことは、選挙管理員会が事実として認定されている。
しかも佐賀県でアルバイトを雇って、不正に署名を集めたことも判明している。
残ったのは、誰が不正署名を指示したのかの解明だけだ。
この問題が俎上に上がる度に、高須代表は「全責任は自分にある」と公言してきた。
それはまさしくその通りだ。
組織の代表は、何かあれば全責任を取らなければならない。
しかし高須は、そうは言いながら必ず「自分は(不正を)指示してはいない」ことも併せて強調する。
高須の話が事実ならば、高須が知らないところで大規模な不正が行われたことになる。
それはそれで、組織がこれほどの不正を仕出かしたことを、代表が全く知らなかったのだから、高須の管理責任は免れない。
このリコール運動は、高須と河村たかし名古屋市長が金看板で、実質の現場責任者は田中孝博事務局長。
この三人が、リコール推進の中心人物だ。
しかしその三人とも「自分は不正には無関係」らしい。
もしもそうなら、幹部は誰も知らないのに、誰かが勝手に会の資金を使って、勝手に不正署名を集めたことになる。
そんなバカなことは起き得ない。
その三人は、単に知らなかっただけでない。
三人とも、事実を知ろうと積極的に行動しないのだ。
もしも自分が無実なら、これほどの不正疑惑の中心人物として疑惑を浴びることは我慢できないはずだ。
しかし誰も、不正の実態を自ら調べようとしない。
刑事事件になる可能性が高いのだから、全てを警察の捜査に任せるのが筋との言い方もあるかもしれない。
しかしそれも程度モノ。
例えば佐賀県のアルバイト不正署名は、誰が発注して、費用はどのように支払われているかは、内部で調べれば一目瞭然のはずだ。
リコールの会に集まった寄付金や、その使用用途は、経理書類を見ればすぐに分かる。
一か月前の記者会見で、高須自身が「経理資料は間もなく公表できる」と発言している。
しかしその後、その資料の公表はない。
僕は、たまたま高須本人と隣あわせ、小一時間話す機会があった。
その時の彼は、全く偉ぶることも構えることもない、テレビで見るままの気さくさで、単なる一市民の僕に接してくれた。
その印象から見ても、自分の意見を通すために悪だくみを巡らすような人物ではないと信じている。
だから彼が「僕は何も知らない」との発言は、代表としては許されるモノではないが、個人的には「そうかもしれない」と思っている。
高須は、不正署名の存在を選管の指摘後に知ったと言う。
高須にとっては将に寝耳に水の情報で、確かにその時は「不正ではなく無効票だ」と主張していた。
しかしそんな僕の欲目から見ても、今回の高須の行動にはいくつかの疑念がある。
その最たるモノは、決着がつけば早期にリコール用紙を回収して、溶解処分しようと焦ったことだ。
自分を信じてリコール賛成してくれた人の、個人情報保護をためとは言うが、不正署名の証拠隠滅を図った疑惑が捨てきれない。
更に昨年9月段階で、リコール活動のボランティアが不正署名を訴えていたのに、高須は彼らを裏切者、スパイと罵倒し、リコール投票用紙を盗んだと告発までしている。
しかしボランティアは、その投票用紙を警察に提出して不正署名を告発している。
盗っ人呼ばわりで告発された人が、それよりも早くその盗んだはずの書類を持って警察に相談するとはブラックジョークで、高須の告発が刑事事件になるはずがない。
思うに、高須は田中事務局長を妄信していたのだろう。
実際に記者会見で高須は「河村市長が紹介した田中を信用しないはずがない」と語った。
この発言は責任転嫁の臭いもするが、やはり高須は、田中が齎す情報を頭から信じた可能性が高い。
その証拠に、リコール運動の中間総括の場で記者から票の集まり具合を質問された高須は、田中から「70万」と耳打ちされた数字を、何に疑問も持たずそのまま発表している。
最終的に不正署名を含めても43万筆しかないのに、70万と答えた高須が、現場を知らなかった可能性は極めて高い。
しかしそれにしても、不正署名が世間の大問題になって二か月間以上が経過した。
その間「線責任は自分に」と言いながら、何ら具体的な対応をしない高須は、甚だ無責任だと批判されてもやむを得ない。
熱烈な高須信者は今でも、高須のツイッターに「先生を信じているから頑張って」と書き込んでいる。
ならば警察が最終的に動く前に、高須自身の調査結果の全てを包み隠さず発表しなければ、オトコ高須の名が廃る。
高須克弥は、いくら李下にあっても堂々と冠を正して、疑いの眼差しを一蹴する「逃げも隠れもしない」国士のはずだ。