日本にしては珍しく、中国共産党政府のウィグル人権弾圧に「深刻な懸念」を表した。
中国に対しては、触らぬ神に祟りなしの原則を守ってきたような日本だが、相次ぐ国際社会の中国批判に追随した形だ。
それでも、EU諸国がウィグル弾圧の中国人当事者の資産凍結にまで踏み込んだのに、日本は「遺憾砲発射」が精いっぱい。
G7の中で日本だけが、制裁に踏み切っていない。
その理由は、日本には「人権だけを直接の理由として制裁を実施する規定がない」かららしい。
しかしたったそれだけでも、中国の報道官の反論は遠慮会釈ない。
「南京虐殺を仕出かした日本に言われる謂れはない」と切り返した。
僕は大の親日オトコで、同じくらいの規模で反中、嫌韓意見の持ち主なので、こんな中国の言い草には人一倍腹が立つ。
南京虐殺なんて、ある訳ないだろう!
日本の立場では、様々な証拠を列挙することで、そのことは証明されていると考えている。
しかしこの日本の反論には、若干だが弱い部分がある。
それは「戦争中なので、日本軍と現地住民との間に、通常起こりうるトラブルはあったかもしれないが」との前振りがあることだ。
これと同じことが、昨年末の米大統領選挙でもあった。
トランプの敗北を認めない勢力は「今回の大統領選では、米民主党による大規模な不正があった」と主張した。
一方トランプの敗北を認めた勢力は「不正はあったかもしれないが、大勢に影響するものではなかった」と反論した。
すると途端に「小規模でも不正は不正、小規模だからと言って許されるモノではない」と再批判が沸き上がった。
これは、一応は筋論だ。
「大規模不正につながるかもしれないのに、些細な不正だから見逃すことは許されない」と言えば、誰も反論できない。
しかし今まで世界中で、不正ゼロの選挙などなかった。
厳格な選挙が実施されるはずの日本ですら、選挙後には公職選挙違反者が跡を絶たない。
緻密さには程遠い、かなりイイ加減な国民性のアメリカで、些末な不正まで論えば、選挙など成り立たない。
現に今回急増した郵便投票での票集めや、代理投票など、怪しげな選挙運動が摘発されている。
だからこの理屈は、突っ込もうと思えばいくらでも粗探しができる。
トランプ支持者が、バイデン支持者も(小さな)不正を認めたから結果を認めないと力説したように、中国は南京虐殺でも、日本の論理の小さな穴を探して、それを針小棒大に騒ぎ立てるに違いない。
日本人は、討論の相手を慮る。
米大統領選の不正疑惑も、中国の南京虐殺疑念も、即刻全面否定する内容なのだが、それでも一応は相手の意見を立てる。
それが「小さなトラブルはあったかもしれないが」の前降りになる。
しかしディベートの世界では、これは弱みを見せたことと一緒だ。
本質の問題から離れた部分で、相手に揚げ足を取られ「技あり」でポイントを稼がれる。
国際問題を議論すると、どちらかが明白な勝者になることはない。
どんな抗議や主張に対しても、必ず反撃があるし、そもそもそれができない外交官などが議論の場に現れることはない。
屁理屈でも詭弁でも、差し違えでも、何でもいいから議論に勝つこと、最悪でも引き分けに持ち込むことが、外交官にとっての資質だ。
だから議論の場では、相手への思いやりなど全く無用なのだ。
米大統領選では、不正などなかった。
南京虐殺など、中国の全くの妄想に過ぎない。
少々無理筋でも、最初にそう言い切らないと、弱みを抱えたままで議論が進展する。
中国や韓国を相手に議論し、日本の立場を主張する時は、日本の国内でしか通用しない遜りは却って逆効果だ。
国内の法整備が不充分でも、中国による今のウィグル弾圧に制裁を加えないのは、対中包囲網の綻びにつながる。
中国、韓国の両国は日本にとって迷惑千万な隣国だ。
彼らの言行の何一つ、参考にしたいとは思わない。
ただ国際社会向けに発信する、牽強付会なあの厚かましさにだけは、呆れながらも見逃す訳にはいかない。
同等、若しくはそれ以上の大声で、怒鳴り返さなければならない。