息子の仕事が変わった。
1月に「今の仕事を辞めるので、説明に行く」と電話してきた。
聞けば「自分の所属する部門は、会社の将来設計から外れていて、希望退職を募集されている」らしい。
本人は「上司からは強く慰留されてはいるが、退職条件が魅力的だし、声をかけてくれた会社もあるからこの際転職したい」と話した。
僕が「それは相談か、報告か?」と質問すると、息子は「報告」と言い切った。
ならば親としては、新職場での心構え以外にアドバイスはない。
息子にとって新天地が、遣り甲斐があって居心地の良い職場であることを祈るばかりだ。
新職場に移るまでの約半月間、予想もしない休暇ができた息子は、九州一周旅行で充電した後、親子ゴルフのために二泊三日で我が家に戻ってきた。
新しい仕事になるとそうは易々とは時間がつくれないだろうから、親子でゴルフに興じるチャンスは少ない。
そんな訳で3月31日、世間様のほとんどが期末で忙しい中、親子三人は、夫婦でメンバーの近所のゴルフ場に赴いた。
何せ第四波武漢肺炎が騒がれているし、会社員に取っては書き入れ時のタイミングなので、ゲストはほとんどいない。
9時スタート予定だったが、「到着次第、いつでもどうぞ」状態なので、30分ほど前倒しでスタートした。
ところが嫁はめったにないほどのナイスショットなのに、親父も息子も朝一番のドライバーが右に行き、ラフからのトラブルでダボ。
そんなこんなで、親父45、息子47、嫁52でハーフ終了。
ラウンド中、前も後ろも誰もいない状況なので、ハーフ二時間もかかっていない。
そこで息子が「スルーでやりたい」と言い出した。
確かに昼食にしては、時間が早過ぎる。
嫁は「疲れる」と渋ったが、自動カートなのでと気を取り直して、そのままプレイ続行となった。
息子は飛ばすが、アプローチが下手でスコアがまとまらない。
その点親父は昔とった杵柄の小技で、ワンパットパーを積み重ねる。
後半は、親父42、息子49、スタミナの切れた嫁は急降下の61。
まだまだ息子には負けない。
そんな親父の貫録を息子と嫁に見せつけて、大満足でラウンド終了。
季節柄、コース内は桜が満開。
親子でプレイなんて、なかなかチャンスがあるものではないが、満開の桜を愛でながらとなると、もっと確率が低くなる。
息子は照れていたが「これは親孝行だから」と強要して、咲き誇っている桜をバックに、母と息子の記念の一枚を撮った。
あの二人にとって、今後忘れられない写真になるはずだ。
その後はレストランで、親子水入らずの昼食。
武漢肺炎対策で広々としたテーブルを贅沢に三人で利用する。
親父と違って大酒のみの息子は。大ジョッキでビールを飲みながら四方山話に花が咲いた。
そしていよいよ精算。
当然ながら、親が負担するものと思っていたが、息子は頑として「自分が払う」と言い張る。
どうも、思っていた以上に退職金が手に入り、気分が大きくなっているようだ。
親としては、今から息子の身に何が起きるのかも心配だし、しっかり貯金しておけとアドバイスしたい一方で、息子の気持ちも有難い。
「今回はご厚意に甘えて」と、息子の世話になることにした。
生まれた直後は発育が遅い、学校の成績が振るわない、なかなか就職できないと、何かと心配をかける息子だった。
しかし彼も世間の荒波に揉まれ、一応は社会人として生活している。
そんな中で、少しは社会常識も身に着けたようだ。
息子の成長を感じながら、タダでゴルフができたことが嬉しい。