ラーメンが大好きで、昼飯の大半はラーメンを食べる。
行きつけのラーメン屋ではすっかり常連さんで、店主とも仲良しだ。
SNSでも、地元のラーメングループに所属し、メンバー同士で頻繁に情報交換をしている。
最近のラーメン好き連中は、食べたラーメンについて悉く写真をアップし、玄人裸足の論評をする。
やれスープは○○系で、麺はドコソコ製麺所、チャーシューと半熟卵の出来は云々。
作り手のラーメン屋も、うかうかしてはいられない。
そんな作り手と食べ手の切磋琢磨が、日本のラーメンが国際的レベルの食べ物と言われるまでに成長した所以だ。
健康に悪いと言われながら、それでもラーメンを食べ続けたオトコとしては、万感迫るものがある。(とはチト大袈裟か?)
ラーメン文化が隆盛なのは、出版される本や、放送されるテレビ番組の多さからもわかる。
ご多分に漏れず最近は、ラーメン関連YouTubeも激増している。
多数の有名YouTuberもいて、どんな資格審査で認定されているのか分からないが、ラーメン評論家まで出現している。
そんな連中に、特にテレビで取り上げられると、一気に人気店になり、顧客が押しかける。
ここからも、多くのラーメン好きが、マスコミやSHSの情報に強く影響されていることが分かる。
しかし、この手の番組は、その大半がインチキだ。
インチキは言い過ぎかもしれないが、ヤラセと言って間違いない。
テレビでは、レポーターの演技ぶりを見ればすぐ分かる。
殆どの番組は、似たような構成になっている。
職人肌の店主が作ったラーメンを試食し、出演者は仰々しく「オシシ~!」「ワァ、綺麗」を連発する。
先だっては、日本テレビ「アナザースカイⅡ」で、人気者の今田耕司と美人タレントと言われる広瀬アリサが、これまた「日本一のラーメン屋」と称される飯田商店をレポしートていた。
究極の食材に拘り、全国で理想の材料を探し回る店主・飯田将太を紹介した後、いざ試食になると、今田は大声を上げて大袈裟にラーメンを褒めちぎる。
アリサの方は丼を前に、これまた普通の「吃驚した時の演技」でも絶対に見せることがないほど、大目を剝いて感激する。
全ては、台本通りに進行するヤラセだ。
およそ10年前の2012年、日本で食べログのヤラセがバレて、騒ぎになったことがある。
ある店が「ここは美味くて人気が沸騰している」と、食べログの投稿システムを利用して煽り立てる。
すると興味を持った顧客が、その店に押し寄せる。
行列ができていると、客が殺到しているように見られ、人気があるのなら一度食べてみたいとの気分になる。
そんなサイクル回しで、無名の店を一躍人気店に仕立てたのだが、それはインチキだと、非難轟々となった。
ラーメン雑誌や番組も、このやり方は基本的に一緒だ。
ラーメン評論家が登場して、一応は「大人気店だから取材した」との建前で紹介するが、実はそうとばかりは言えない。
その昔から、マスコミの力で人気店や人気ラーメン作り手を人為的に作り出すやり方があり、それが今でも続いている。
もう10年以上も前の話だが、日本テレビがラーメンチャンピオン大会を放送したことがある。
そこで優勝すれば日本テレビ放送局の一角に、ラーメン店を開店できる副賞付きだったが、優勝してオープンしたラーメン店の、最初の一年間の人気は凄かった。
たまたま隣のビルで仕事をしていたので、窓から見下ろせばそのラーメン店に並ぶ客の列の長さが分かる。
すぐ傍で勤務しているのに、昼休みの全ての時間を犠牲にしても、到底目的のラーメンにありつけない。
そんな大人気だったので、ラーメン好きの仲間内では「あのラーメンを食べたい」が合言葉のようだった。
ところが一年が過ぎた頃から、段々と列が短くなってきた。
そして二年も過ぎたら、昼食に行っても全く並ぶ必要がなくなった。
不思議なもので並ばなくても食べられると、途端に興味がなくなる。
しかも最終的には、あれほどの人気があったはずなのに、わずか数年で閉店となってしまった。
テレビで放映すれば、大注目を集め、一時的には客が集中する。
しかし肝心の味が認められないと、その人気は長続きしない。
日本テレビの壮大な実験が見事に失敗に終わったことが、そのことを如実に証明した。
人気や注目を集めるために、マスコミやSNSを利用するのは決して悪いことではない。
しかし客は、満足しない限り、その店のリピーターにはならない。
手練手管でで人気を集めても、それが定着するものではない。
客商売にとって一番大事なことは、客に評価される腕自慢だ。
ここでもマスコミやSNSの情報は、玉石混交、真偽相乱れている。
我々が食べログや美味しい店紹介を参考にする場合は、そんなことを前提にしなければいけない。
大外れで不満タラタラの結果になっても、それは自業自得だ。