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リコール不正事件の謎、高須克弥の謎

愛知県知事リコール不正事件は、理解できないいくつかの謎がある。

その最たるものは、あれほど杜撰な不正なのに、なぜ途中でストップできなかったかだ。

 

リコール運動は、武漢肺炎の第二波真っただ中の、8月後半にスタートしている。

それでも、全国的人気者の高須克弥が会長を務め、名古屋では絶大な支持を集める河村たかし名古屋市長がリコールの旗振りで金看板なので、愛知県だけでなく全国的に注目度は高かった。

 

しかしそれなりに鳴り物入りでスタートしたはずの運動だが、9月の段階で既に不正署名疑惑が発生していた。

要は思っていたほど、リコールへの関心が高まらなかったのだ。

賛成票が、一日にわずか百筆、多くて2百筆しか集まらない。

リコールの会の目標は百万筆だが、このペースでは運動期間の二か月間での目標達成には遥かに及ぶはずがない。

しかもボランティアの証言では、肝心要のリコールの会が全く機能しない、驚くほどの無能組織だった。

結局は、ボランティアの献身的な活動だけが頼りの、全く前途多難な活動ぶりだったようだ。

 

ここで最初の疑問点だが、これほど役立たずの事務局と、その束ねになるはずの田中孝博事務局長は、誰が任命したのかだ。

これについては、諸説出ている。

高須は、河村が田中を推薦したから信用していると回答している。

一方の河村は、田中と一緒に高須に会ったが、自分が紹介して訳ではないと言う。

今回の不正事件の最初の告発者、ボランティアの水野昇氏は、自分が田中を河村に紹介したと言う。

今回の不正事件で最も疑われている田中だが、どのような経緯でリコール運動の実質的中心人物になったのか、まるで分っていない。

 

愛知県で地盤の弱い日本維新の会が、リコールを利用して公認候補の田中を売り出したかったとの見方も強い。

決して選挙に強いわけではなく、且つ資金的な余裕がない田中にとって、リコール事務局長として辣腕を奮えば、保守界隈での知名度は飛躍的に上がる。

そんな思惑から、議員としての政治的手腕も、管理者としての実績もまるで未知数ながら、維新が田中を事務局長に推薦したのではないかとの見方だ。

実際に大阪の吉村洋文知事は、不正疑惑が騒がれるまでは、高須とリコール活動に熱烈な支持を表明していた。

また後に佐賀県での不正署名アルバイトがバレたが、その現場で指揮を執っていたのも維新の市議だ。

不正発覚後、日本維新の会は田中の公認を取り消し、維新党籍も剥奪して尻尾切りをしたが、組織としてリコール運動に関わっていたことは間違いない。

 

高須が不正署名の存在を、いつ知ったのかも疑問だ。

数人のボランティアが、不正署名の存在に気が付き、内部で告発を開始したのは、9月の早い時期だ。

虎ノ門ニュースの有本香は、リコール応援に馳せ参じた時に、先のボランティア、水野から高須宛の告発の手紙を預かっている。

これが高須の手元に届いたのか否かは、有本しか知らないが、ボランティアは何とかして高須に不正署名の存在を伝えようとしていた。

ところがこれに対して高須は、そんなボランティアを「スパイ」「裏切者」と罵倒している。

 

また不正署名を警察に告発するために、不正署名簿を抜き取った行為を「僕の署名簿を盗んだから窃盗」として刑事告発までしている。

しかし、この理屈は苦しい。

署名簿は会長個人のモノでもないし、最近の解釈では、内部告発のための行動なら、法的にも守られる。

高須は、不正に手を染めていた田中の言い分を、丸ごと信じていたのか、あるいは自らも不正に関わっていたのかのいずれかになる。

 

佐賀県不正署名の発注者と資金の流れは、刑事事件として捜査されるので、間もなくその実態は分かる。

しかし、不正に走った動機が分かっていない。

推測では、リコールが成立する賛成票を集めるのは到底無理だが、せめてカッコがつく票数にしたかったとみられている。

それが必要数の約半分、43万筆の確保だ。

実際に集まったいわゆる正票7万強に、不正署名35万強を加え、一見すると残念賞のイメージでリコールを終えたいとの考えだ。

 

これは「中らずと雖も遠からず!」

ほぼこんなイメージだろうが、ここでも「では違法行為をしてまで守りたかったイメージ」は、一体誰のためかが問題になる。

選挙に立候補する田中の拍付けなのか、先頭で戦ってきた高須の世間体、若しくは求心力を守るためか。

そしてもちろん、この不正を指示したのは誰で、それは単独犯なのか、組織的犯行なのか、分かっていない点が多い。

 

また何故リコールの会は、署名簿を選管に届けたのかも謎だ。

選管は、リコールが成立するだけの賛成票が集まった時だけ、その内容をチェックすればよい。

元々リコール不成立なら、その内容を精査する必要などない。

今回は、不正署名込みでも、必要数の半分しか集まっていない。

だからリコールの会は「43万筆集まったが、残念ながらリコールは成立しなかった」と宣言して、高須が必死に主張していた「個人情報保護のため」に処分すれば済む話だ。

 

それをわざわざ、開票の実況中継をやり、足りないと分かっているリコール票を選管に届ける。

しかも届けた後、今度は一転して選管に「すぐに返せ」と強要する。

やっていることが、チグハグ過ぎるのだ。

 

リコール不正が事件化する過程で、高須は一貫して

 ・不正は一番嫌いだし、不正に関与していない

 ・全責任は自分にあり、逃げも隠れもしない

と言い続けたが「政治資金規正法で150万円寄付しただけ」については、別途12百万円の「貸付金」があったことが判明した。

建前上は貸付だが、限りなく寄付金のこの問題について、高須は3月末まで一言も説明しなかった。

 

高須は、いつ不正署名を知ったのか?

高須が何故あれほど、不正署名告発のボランティアを敵視したのか?

篤志家としての高須の政治主張を信頼し、支持してきた僕には、それこそが今回のリコール不正事件で最大の謎だ。