昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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爺ィの行状

いつもは嫁のついていくのだが、たまたま一人でスーパーに出かけたことがある。

当初は何かと戸惑った、セルフレジの自動精算システムにもすっかり慣れた。

適当に買い物して、機械相手にチャチャっと支払いまで済ます。

リタイアしてやることがなくなった老人には、けっこう暇つぶしになる。

 

この日も、レジを終えて帰路に就こうとした時、爺ィの大声が聞こえてきた。

後ろを見ると、65歳くらいのヤング爺ィが、70歳くらいのミドル爺ィを怒鳴りつけている。

他人の喧嘩は面白いので、しばらく観戦することにした。

 

どうやら揉め事は、レジが空いたのに70がモタモタしていたことが発端らしい。

 65 「あそこのレジが開いたから早く精算しろ」

 70 「ハァ?(と、何を注意されたのか分からない)

 65 「並んでいる皆が迷惑するジャないか」

 70 「うるさいナァ」

ここで65が切れて、大声を張り上げたようだ。

 

こんな抗議をされた時の爺ィの対応は、間違いなく二分される。

素直に謝罪して、手続きを急ぐ爺ィが二割。

残りは、無視するか、あるいは開き直って更にスピードを落とす。

今回の70爺ィは後者の類で、その所為で65の怒りに拍車がかかった。

増々怒鳴り声が大きくなるので、とうとう女性店員が駆けつけてきた。

 

 店員 「お客様、何かありましたか?」

 65 「この爺ィがモタモタして……ガーガーガー」

そうこうしている間に、70爺ィはチンタラしながらも手続きを完了し、何事もなかったかのように現場を離れてしまった。

怒りの向け先がなくなった65爺ィは、今度は女性店員に絡み始める。

 

 65 「だいたい、こんなセルフレジシステムが混雑の原因」

 店員 「そう言われても、レジの混雑回避のために始めたモノで」

 65 「ならば、あんなヨボヨボ爺ィの指導員を増やして……ガーガーガー」

 

余りのしつこさに、女性店員は男性店員のヘルプを呼ぶ。

女性は解放された思いからだろうが、思わず微笑んでその場を離れようとした。

65爺ィは相手が男性に変わると、少々分が悪くなることを自覚したのだろう。

その女性店員の笑顔を見逃さず、到着した男性店員に「このオンナが笑ってオレをバカにした」と因縁をつけ始めた。

 

元々は70爺ィに文句を言っていたはずが、ここからは女性店員への説教と変わる。

 65 「客商売なのに、一番大事な客をバカにしていいのか」

 女性 「イエ、決してそんなことはしていません」

 65 「俺は確かに見た、この店の社員教育は……ガーガーガー」

 男性 「そんなことはないとは思いますが、今後気を付けさせます」

 

常軌を逸した65爺ィのしつこさと、中身のバカバカしさに呆れ果てて、同じく閑老人の僕はここで現場を離れたので、その後どう決着したのかは知らない。

推測するに、グダグダ文句の65爺ィが適当に疲れたところで、男性店員が「誤解を生じないように教育を徹底します」とでも言ってお引き取り願ったのではないだろうか。

 

閑になった爺ィは、本当に扱いにくい。

時間が足りないと悩む現役時代から一変し、有り余る時間を持て余している。

いくらでも時間はあるから、例え揉め事でも構って貰えるのなら格好の暇つぶしになる。

自分に少しでも言い分があれば、ネチネチ・クドクドとくだを巻き続ける。

しかし店にすれば、市場が縮小している中で、リタイア爺ィは大事な顧客層だ。

徒や疎かにはできない。

今回の店員のように、我慢強く宥め賺してお引き取り願うしかない。

 

実は僕も、他人のことは言えないことを仕出かしている。

先日、医者に処方された薬を入手するために、薬局に行った。

午前11時50分に入店、すぐに手続きを終わったが、その後、前からいた客も後から来た客も全員帰ったのに、僕だけ待てど暮らせど名前を呼ばれない。

たまたま「支払いシステム変更で時間がかかる場合があります」との張り紙があったので、その所為かと思っていたが、そのうちに午後1時になってしまった。

いくら何でも、遅すぎる。

腹も減ったので受付で確認すると、何と提出していた処方箋が別の場所に入り込み、今から大至急で手配すると言う。

薬局側は平謝りだが、どうにも腹の虫がおさまらない。

空腹の中、一時間以上もまたされた挙句が「今から」とは、さすがに我慢の限界を超え、大声で抗議してしまった。

 

その時は、薬局側が一方的に悪く、僕には怒るだけの資格が十分にあると思っていた。

しかしスーパーの65爺ィの行状を見ると、中身の正義云々より以前に「いい歳をして大声を上げるなんて」と、周囲の顰蹙を買っていたに違いない。

改めて、人の振り見て我が振り直せ。

実に恥ずかしいことをしたもので、思い出すと赤面の至りだ。

歳は取ったが未熟者。

まだまだ、人生修行の入り口にいることを痛感する、我が行状だった。