SNSで、近隣のラーメン同好会に所属している。
自分が食べたラーメンを写真付きで紹介し、情報交換するグループだ。
そこで、好みのラーメン屋の趣味が一緒で、すっかり親しくなった御仁がいる。
ただ、どれだけ親しそうになっても、そこはSNSの世界。
直接会って話すことはない。
にも拘らず、彼のことがかなり分かっているのは、彼がラーメン以外に地元サッカーチームのサポーターをやっているからだ。
そしてこちらのグループには、顔写真付きの彼のプロファイルが紹介されている。
と言うことで、彼の方はこちらを知らないが、こちらは彼の名前も顔も知っている状態の、真に不公平不平等な関係になっているのだ。
尤もこちらとしては、そんな片務的関係を悪用しようなどはツユほども考えていない。
同じラーメン好き同士で、今後とも距離を保ちつつ、仲よく付き合っていく積りだ。
ところがヒョンなことで、彼のラーメンとサッカー以外の嗜好が分かってしまった。
彼がSNSに投稿したモノが、自動的にフォロワーのこちらにも流されて来るからだ。
それが、ラーメンやサッカーに関してだけなら問題ないが、別の嗜好の世界にまで及ぶと、彼の知ってはいけない部分を垣間見ることになる。
それが彼がフォローしている「アラサー秘書○○」と「R○S○」の女性のアカウントサイトだ。
彼がこの二人を相手にTweetすると、それが当方にも送られてくる。
この二人の女性には共通項がある。
・歳の頃なら30歳前後
・離婚歴ありの子持ち
・そして決定的な点は、二人揃ってかなりの巨乳
毎回、顔は隠しているが、殊更に胸を強調した写真と共に「寂しい」とか「セッ○スしたい」とか、艶めかしくも切ないオトコ殺しの文言が並ぶ。
そして、何を目的にしているのか知らないが、この女性たちのSNSには、たくさんの男性フォロワーがついている。
何を隠そう、僕の知人もその一人だ。
ただ彼の場合は、単なるフォロワーよりも一歩進んで、件のその女性とのチャットを楽しむのがお好みのようなのだ。
・女性「アァ退屈、話し相手が欲しいけど誰もいない」
・知人「○○チャン、それが人生サ」
・女性「アァ、今から出社しなけゃ」
・知人「オハヨー○○チャン、今日も頑張ろ」
普通ならなんてことないチャットだが、恐らくは彼は、こんなチャットがバレバレになっていることを知らないのではないだろうか。
知人の誰にも気付かれることなどないと、高を括っているのかもしれない。
そうでなければ、妙齢の女性に対してイイ歳をしたオッサンが、こんな気恥ずかしいセリフなど吐けるものではない。
こちらとしても、あの彼が、あんなにラーメンに蘊蓄を傾ける彼が、あんなに熱烈にサッカーチームを応援する彼が、こんなニヤけたチャットをしているのが信じられない。
真面目一方に見える彼の秘密の部分を、ついつい覗き見したような気分になって落ち着かない。
彼とは顔を合わせる間柄ではないのが救いだが、本当の知り合いなら、やはり一言「ヤメトキナ」と注意を促すだろう。
SNSは楽しい。
特に見ず知らずの同好の士と知り合いになり、情報交換ができると世間が拡がる。
特に人気のラーメン店とか、その店で特に人気のあるメニューとかが分かると、その店を訪れる楽しみが増える。
しかしそんな情報交換以外に、フォロワーに余分な情報が拡散することがある。
実はFacebookもTwitterも「友達の友達は友達」精神で、どんどん友達紹介が増える。
彼のように、フォローしている人にリツイートすると、途端にその内容が一目瞭然になってしまう。
女性の好みがバレて、そのことであれこれ詮索されたり、性格判断までされると、バツが悪い思いがするだろう。
SNSは、情報収集の手段に限定する方が無難だ。
しかしついつい、余計なお世話と分かっていてもチョッカイを掛けたくもなる。
何事にも功罪相半ば。
用心しながらSNSを利用して、自己防衛を図るしかない。