歳をとってすっかり早起きになっているが、旅先ではそれにさらに拍車がかかり午前4時には目が覚める。
やることないからスマホでゲームでもしていると、それなりに暇潰しができる。
午前7時、ホテルで朝食。
春に来た時、朝食の味に感激した家族連れの親父が「コメはやっぱりコシヒカリ?」と店員に質問していたところだ。
旨いコメ=コシヒカリのイメージしかない悲しい老人の習性を見て、我が身を自制した覚えがある。
この日の天気予報は、残念ながら「曇りのち雨」。
その予報通り、朝食が終わりイザ出かける段の午前10時ころから、ポツポツと雨が降り出した。
本日の午前中は毘沙門堂へ。
最寄りの山科駅から毘沙門堂までは徒歩15分くらいだが、ずっと上り坂が続く。
傘をさして歩く老人にとってはアゲンスト状態なのだが、一つ良いことに気が付いた。
昨日に比べて、歩行者の数が少ないのだ。
観光客が雨を嫌って出かけないに違いない。
それでも老人集や、少ないとは言え中国人観光団はいるが、うるさくて邪魔になるほどのレベルではない。
雨にけぶる毘沙門堂の紅葉も、なかなかに乙なものだ。
一旦ホテルに戻って、次の昼飯は折角の京都だからと「ギョーザの王将」へ。
前社長が非業の死を遂げ、犯人と思しきヤクザが逮捕され話題になっているが、勿論そんな話題は、この店ではタブー。
二人前を注文したが、初めて味わう王将のギョーザは今までのどの店よりもデカくて、腹一杯になった。
午後のスタートは南禅寺へ。
それなりの観光客がいるが、それでも動くのに不自由するほどの混み方ではない。
交通整理のオジサンによると「土日は2千人以上が押しかけてきた」らしいが、この日はその十分の一程度だろう。
広大な敷地を隈なく歩いて、最後は水道橋へ。
同じようなモノを、スペインでも見たことがある。
洋の東西を問わず、困った時に人間の考えることはそうは違いがない。
しかしこの用水で「魚釣り禁止」の立て看板には驚いた。
こんなところに魚が生息していることもさることながら、そんな魚を釣ろうとする人間が徘徊するとは。
この後一旦ホテルに帰還して英気を養う。
最後は今回の旅のハイライト「瑠璃光院」へ。
雨は上がったが、出町柳駅までは個人タクシーを利用。
良く喋るこの運転手で様々な蘊蓄を垂れていたが「お客さん、傘持ってる?」と聞いてきた。
彼によると何でも、九州地区の大雨がまもなく関西にもやってくるらしい。
「ナアニ大丈夫」と高を括っていたら、最寄りの八瀬叡山口駅に到着したころから本降りになってきた。
吉川英治が書いた「宮本武蔵」で、一条寺下がり松の決闘が有名なところだ。
その記念碑もあるらしいが、そもそもどこまでが史実か疑わしい。
今ではラーメンで町興しをしているようで、ラーメンマップが紹介されていた。
瑠璃光陰は、入場するために事前予約が必要だ。
予約なしだった直前の女性三人組は、係員の説明を受けて悲鳴を上げていた。
我々は16時の予約で、列の先頭に並ぶ。
最近になって瑠璃光陰はインスタ映えですっかり有名になり、その入り口で記念撮影する連中が後を切らない。
何とか人がいない場面のシャッターチャンスを狙うが、他の連中も同じ考えなので、結局ウジャウジャの観光客込みの写真になった。
ここでは約20分間の観光コースが予定されている。
しかし撮影スポットを確保した連中は、なかなかそこを動かない。
係員が「他のお客様にも席を譲って」と声をかけるが、厚かましい輩はすっかり座り込んで雑談に花を咲かせる。
そんな中でも常識溢れる我々夫婦は、寺側の思惑通り20分で観光完了。
ホテルに戻ったが、この時点でこの日の歩数が17千歩と記録更新。
最後は晩飯だが、お気に入りの蕎麦屋が休み。
開業しているはずの店をネットで調べて赴いたが、老舗のその店は潰れたようだ。
代替案は、春で行ったことがあるイタ飯屋だったが、ここは予約客で満員。
進退窮まりコンビニ弁当を覚悟したが、帰路途中にイタ飯屋を発見。
「予約なしだけど」と恐る恐るダメ元で問いかけたら「OK!」と予想外の返事。
地獄に仏とはこのことだ。
しかもメニューにはないが、ボンゴレビアンコもできるらしい。
飢えてすこぶる機嫌が悪くなっていた妻は、美味しいサラダとカラスミパスタですっかり気分を良くしていた。
最後の晩飯探しで稼いだ所為で、何とこの日の歩数は期せずして2万歩超。
疲れ果てて爆睡となった。