昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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拝啓、浅田次郎先生様

JALを利用して出張する事が多い。
機内では、ほとんどはヘッドフォンで音楽を聴くか落語を聞くかだが、機内誌「SKYWARD」を読む事も多い。
きれいな写真と気の利いた文章がいっぱいで、いかにも飛行機で旅をしたくなる。
この機内誌には、浅田次郎大先生の「つばさよつばさ」の随筆も連載されている。
流石に大流行作家で、且つ直木賞選考委員をも務める先生なので、軽妙にして洒脱、大変読み甲斐があるので、毎月楽しいにしている。

ところで、浅田先生10月号、第79回の力作は「話にもなりませんわ」とのタイトル。
中身は、最近の温泉地の凋落ぶりを嘆くものだが、「温泉地の観光サービス努力が決定的に不足している」と、辛口の評論になっている。
具体的な例として、浅田先生がお気に入りだった上州の温泉地の出来事を紹介。

浅田先生は、「私のおすすめ温泉」のグラビア企画で、寂れた温泉地の復興に些かなりとも手助けできればとの義侠心から、温泉の共同浴場でスナップ写真をとる事になったそうな。
ところが湯殿の入り口で、先生だけでなくスタッフもスッテンコロリンと滑って転げたらしい。
この辺は、口には出していないが、いかにも湯殿の掃除が不充分な事をにおわせている。
ところが、湯殿にいる地元の連中からいかにも迷惑気な空気が伝わってくるので、ソソクサと撮影を終え慌てて湯殿を出たところで、湯殿の中から剣呑な声で「濡れた体で板の間に上がるな」と注意された由。
先生は詫びを入れ、慌てて濡れた板の間を拭いたところに「張り紙が見えないのか、ガキじゃあるまいし」と更なる一撃を受け、ブチ切れてしまったらしい。
「おっしゃる通りガキじゃねえが、そう言うおまえもガキにゃ見えねえぞ。昔からここにゃ通ってきたが、おまえの親父は俺の親父の足跡を黙って拭いたはずだ」と、売り言葉に買い言葉で凄んでしまい、「おとなの雑言は気の晴れるものではない」と、反省していた。
確かに、浅田先生は善意から寂れゆく温泉の失地回復の為に、一肌脱いだ積りだろう。
それなのに、湯殿で滑った挙句、迷惑がられ、濡れた足で板の間に上がった事を厳しく咎められたのが腹に据え兼ねたようだ。

浅田先生の筆に拠ると、最後の決め台詞は分かり難いものの、いかにも湯殿のアンチャンに難癖をつけられたと言いたいようだが、冷静に読めばどう見てもこれは一方的に先生が悪い。
浅田先生達は勝手に温泉地PRを企画したもので、地元の人達は浅田先生に温泉地の宣伝を依頼したものではない。
静かに温泉気分に浸っている時、ズカズカとカメラマン達を引き連れ湯殿に入ってきて、写真まで撮りまくったら、気分を害するに違いない。
その上に「濡れた体で板の間に上がらないように」と、張り紙で注意している事まで守らなかったら、ついつい厳しく咎めたくなるだろう。
「ガキじゃあるまいし」なる言葉は穏便ではないが、浅田先生のとった態度は分別盛りの大人としては、公衆道徳が欠落したものと言われても仕方がない。

浅田先生のようなオエライ人に対しては、面と向かってなかなか注意する人などいないのだろう。
その意味では、湯殿から敢然と厳しい叱声を放ったアンチャンは、随分と度胸のある人だ。
と言う事で、誠におせっかいながら、天下の大御所、浅田次郎先生にご忠告申し上げます。
浅田先生、アンチャンの言葉を素直に受け止め、自分のとった態度を反省すべきであって、JALの機内誌で相手を論うのは公平さに欠けていますゾ。