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期待の太陽光発電だが......

今後の電力不足が懸念されるにつけ、原発の是非を巡る議論が姦しい。
基本的には、「危険極まりない原発に依存してはいけない」意見と、「そうは言っても当面は原発に依存せざるをえない」考えがぶつかり合っている。
前者にも、「原発がセロになっても電力は足りる」楽観派と、「原発停止で電力が足りなければ我慢すればいい」と考える二派がある。
後者も、「絶対に安全・大丈夫だから、今後とも原発主力の電力政策を」のような意見はさすがに消えた。
今は、自然エネルギー発電には理解を示しつつも、不安定であり高コストの弱点が克服されない限り、主力の電力源と考えるのは時期尚早だと主張している。
いずれの考え方でも、自然エネルギーによる発電を否定する意見は皆無で、将来的には最も魅力的な電力源との見方は一緒だ。

なかでも、太陽光発電への期待は高い。
いつの間にか、自然エネルギー発電のエース格扱いとなっている。
二酸化炭素排出を抑える点からも、注目されている。
太陽電池の基本コンセプトはアメリカ発らしいが、一時期日本企業が世界をリードしていた。
既に50年以上にわたって開発されてきたテーマだが、長らく全く目立たず、この数年間でやっと花が開いた。
特に環境にうるさいヨーロッパで、ドイツ・スペインが積極的に太陽電池支援策を打ち出した事で太陽電池バブルが発生、爆発的に需要が拡大した。
そこで、世界中の企業が我も我もと新規参入、夢の電力源として一挙に注目を集める事になった。
しかしその後、太陽電池推進の中核国家だったドイツでもスペインでも、結果的には支援策負担が重荷となる。
電力料金に跳ね返り、余りの高コストに産業界から不満が続出、ついにはFIT(フィードインタリフ)を大幅に削減する事態となっている。
日本では、民主党政権下で、太陽電池支援策が強化されている。
幸いにして、それなりに太陽電池需要が拡大はしているものの、ヨーロッパでは一時期ほどの熱気は消えている。

太陽電池の生産プロセスは、自動車産業と一緒の組み立て産業だ。
日本ではシャープとか京セラが太陽電池生産会社として有名だが、彼らは各部品を調達してこれを組み立てるだけ。
自動車との一番の違いは調達する部品の数で、自動車は数万点のレベルだが、太陽電池は精々数十点。
シリコンとガラスとアルミ枠とプラスチックシートが基本構造。
無論、発電効率を上げる為の各社ノウハウがあるが、太陽電池を作る事自体は自動車に比べ遥かに易しいので、発展途上国からの参入も容易。
今や世界の太陽電池メーカー売上げベスト10では、半分が中国勢となっている。
往時、世界をリードしていた日本勢は、わずかにシャープ一社が8位くらいにいるに過ぎない。

また構造が単純なので、コストの切り下げも楽ではない。
コストに占めるシリコンの比率が高く、これが下がらないと大幅コストダウンは出来ないが、そもそもは半導体の余剰安値シリコンだったのに、ここ数年の太陽電池需要増からシリコン価格が暴騰、一挙に4倍にも跳ね上がってしまった。
この間、シリコン調達に失敗した日本企業のシェアが急落した。
国際的に不足気味となったシリコンを避けたタイプも開発されて入るが、発電効率が低いので、シリコンタイプほどは普及していない。
太陽電池業界全体でも、普及の為には他の発電と同様価格が必須との共通認識があり、グリッドパリティ実現を掛け声に努力しているが、目標は2030年と先が長い。

太陽電池が素晴らしい電力源である事には異論がない。
しかしその発電コストは、他のどれよりも高く、今のところ、政府の保護なくしては成立し得ない。
結果的には高い電気料金を負担する構造となり、特に産業界はそっぽを向く。
NHKの討論番組で、吉永某は「今や国が総力を挙げて研究すれば、必ず解決策が見つかる」と話していたが、こんなのは何ら裏付けがあるわけではない。
むしろ世界中の超一流企業が半世紀にわたって研究してきた結果が今の実力であり、構造が簡単なだけに智恵の絞りどころも少ない。

僕は、今のような屋根に載せる仰々しい太陽電池では、普及に限界があると思っている。
価格も一台およそ2百万円と高く、償却に20年以上かかる。
新築物件しか元が取れず、しかもあんなに重たいものを屋根に載せる事が良い訳がない。
もっと軽くして、屋根だけでなく壁や窓にも取り付け可能なタイプでスペースを有効利用すると同時に、格段の発電効率が求められる。
「言うは易く、行うは難し」だが、そんな太陽電池が登場しない限り、いつまでの「夢の発電」で終わってしまうような気がする。