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末期癌になったら延命治療は拒否するぞ!

末期の直腸癌で余命半年を宣告されながら、延命治療を拒否した入川保則さんが死亡した。
3月にカミングアウトしたのだから、見立てよりも若干長生きした事になる。
途中では、癌患者特有の急激な痩せもなく、ステーキを平らげたり、主演映画の試写会に参加したり、とても余命半年には見えないと評判になった。
しかしやはり、癌を克服する事は出来なかった。
万一の奇跡を願っていたに違いない近親者には、「やはり駄目だったか」との落胆もあるだろう。
しかし僕には、本人の価値観、死生観で癌治療を拒否した姿勢には、潔さと憧れを感じる。

医学が発達した現在でも、癌は死亡率が高い。
実は僕は、両親とも脳腫瘍が間接的理由で死亡しているバリバリの癌患者予備軍なので、癌に対しての恐れは人一倍強かった。
母親は入川さんと同じ「余命三カ月」を宣言された。
違うのは、本人には告知されなかった事と、医者から手術を勧められ、家族が同意した事だ。
医者は「手術をしなければ三カ月、すれば余命半年になる。しかしこの三カ月間で画期的な治療薬が発見されると、ご家族は後悔されますヨ」と、体のいい脅しをかけてきた。
こう言われると家族は弱い。
駄目と分かっていても、手術を受け入れざるを得ない。
脳腫瘍の手術は、髪を全部剃らねばならない。
自分は高血圧の所為で入院していると信じていた母親は、手術の日、何の心の準備もなく、突然髪の毛を剃られたので、一体何をされるのかと怯えたらしい。
結果的にはこの手術が大失敗、入院後三カ月も持ちこたえる事が出来ず、自宅療養の為の退院途中に心臓発作で死亡した。

30年以上前の当時は、癌の告知は一般的ではなかった。
癌治療は、本人に多大な苦しみを与えるらしい。
しかも例え手術しても、寿命が半年から一年ほど延びるだけが大半だ。

僕の母親は、気位の高い人だった。
もしも自分が末期の癌患者で助からないと知っていたら、果たして手術を受け入れただろうか?
恐らくは、慫慂と死を覚悟したと思う。
母親の手術は、本人にも家族にも苦痛だけをもたらすだけだった。
入川さんのように、延命治療そのものを拒否する人が出てきても何ら不思議ではない。

僕自身、母親の顛末を知っているだけに、自分が癌になった時に手術をしようとは思っていない。
保険だけはたくさん加入しているので勿体ない気もするし、いわゆる保険金太りに未練がないわけではないが、入川さんは人生の最後に当たってそんなセコイ考えの無意味さを教えてくれた。
確かに、治る見込みもないのに、体を切り刻まれるのは御免蒙りたい。
母親の手術への無念さ、入川さんの生き方を見ると、癌になったら、それを運命として受け入れよう。

因みに父親も自分が脳腫瘍とは知らなかったが、こちらは持病の喘息の所為で手術に耐える体力が無く、最初から延命治療はできなかった。
早朝、カーテンを開けに来た看護婦に挨拶した後、食事の配膳の時には死んでいたらしい。
誰にも気づかれないままで、全く苦しんだ跡がなかったのが救いだった。