昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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ベストセラー作家藻谷浩介氏の講演会

藻谷浩介氏の講演を聞いた。

東大法卒、日本開発銀行入行、現在は日本総合研究所調査部主席研究員。
数年前の著書「デフレの正体」がベストセラーになったらしいが、残念ながら読んではいない。
容姿は講演内容には無関係だが、やたらと頭がデカい割には極度の短足なので、縫いぐるみが大声で喋っているように見える。

演題は「デフレの正体と企業の活路」だが、内容は、
1.巷間、日本経済は円高で壊滅的打撃を受けていると見られているが、実際は全く違う。
2.日本の政治家やマスコミが本当のことを話していない。
3.その結果、間違った世論操作と、間違った政策がとられている。
4.経団連の講演会でも同じことを言うと、評判が悪くなる。
と、具体的な日本の各国別輸出入統計をベースに、現在の経済施策を批判したものだった。

内容は、
誰もが不景気のどん底と思っているが、2011年の輸出総額を見るとバブル時代の1.5倍。
バブル時代の円レートが@120~130に比べ、最近ではおよそ@80。
よって輸出産業が壊滅的打撃を受けていると洗脳されているが、実際はむしろ輸出が増えている。
国別にみても、世界中でフランスとイタリア以外では、日本の貿易収支は常に黒字。
フランスは観光や有名ブランド製品が強く、日本から高品質機械部品を輸出しても収支はトントンだったが、ここにきてワインが大量に輸入、イタリアからもまた、パスタ等の食品や調味料を大量に輸入している貿易収支が赤字になった由。
中国、韓国や東南アジアは、基幹部品はすべて日本から輸入せざるをえない。
国際社会では、日本は韓国、中国に負けっぱなしと言われているが、実は日本製品を間接的に輸出しているようなものだ。

しかし日本のこの貿易収支も、一旦円安になると、一気に様変わりとなる。
それは100%輸入に頼っている、原油の調達価格が大幅にアップするからだ。
韓国の歴史的ウォン安は、国内に深刻なインフレを引き起こしているし、中国の元切り下げも、結果としては国内通貨の信用を毀損しているようなものだ。
直近の貿易収支は31年ぶりで赤字転落したが、これはやはり原油調達価格が上がったからに他ならない。
日本にとって円安になると、良いことは何もない。
31年前は第二次オイルショックだった。
現在は第三次オイルショックなのだから、日本がとるべき施策は、過去のオイルショックを乗り切った時の「省エネ」再現しかない。
因みに、安価シェールガス発掘で30年間は原料の競争力が確保されたアメリカは、この所為で二度と国際競争力を手に入れることはなくなった。
アメリカは安価な原油があれば、当面は何も努力しなくても生き延びることができる。
しかし30年後には、国内には全く競争力のない企業だけになってしまうからだ。

讃岐うどんがブームになっているが、原材料は大半がオーストラリア産なので、どんなに売れても、実際の利益はオーストラリアに落ちてしまう。
フランスのワインは、まさに原材料を自己調達した高品質高価格製品であり、日本酒もそのような評価を得ている。
日本が生き延びる道は、他国に真似できない高品質な製品を作り、高価格で輸出することと、省エネで競争力を高める事。

との結論で、講演会を締めくくった。

このような講演会の講師については、「講釈師、見てきたような嘘を言い」のイメージがあり、極端に偏った意見が多いので、常に用心して聞くことにしている。
今回も、では円高になれば今の産業界が救われるかと言えば、確かに原油や原材料は安く買えるが、製品の付加価値部分の手取りは悪化してしまう。
必ずプラスマイナス両面があるはずで、そんなに単純に割り切れるはずがない。
しかし、省エネに関しては、コストダウンだけでなく、中長期的な電力不足対策や、脱原発の為にも必須なので反対のはずがない。
既に何十年も使い続けた、会社の老朽設備更新も検討しなければならない。
我が家でも、妻主導で冷蔵庫や洗濯機を買い替えたが、そのお蔭で劇的に電力が減ったと自慢していた。
後は、既に20年以上使ってきた古エアコンが残っているので、これも買い替えて、公私両面で需要拡大にも寄与することにしよう。