昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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公私混同は褒められた事ではないけれど......

僕が出会ったオーナーたちの多くが、後継者に悩んでいたことは以前書いた。
http://blogs.yahoo.co.jp/saraam_s/62453749.html
もう一つ、オーナーの悩みの種が、社内の人材不足だ。
自分がオールマイティなので、どうしても部下が育たない。
社員全員が社長の指示待ち族になってしまい、社長がいないと何一つ決まらない。
社員にすれば、例えどんな簡単なことでも社長の決裁を得ないで進めると、後でとんでもないお小言を喰らう。
自衛上、何でもかんでも社長にお伺いを立てる。
結果として社長は、自分で撒いた種なのに、社内に仕事を任せられる人材が育っていないことが不満で不安で仕方がなくなる。
こんな時にオーナー社長が採る方法は、大方同じだ。
外部から、優秀な人材をスカウトする。
これなら、自分の目に適った人材を即戦力で補強できる。
僕がお付合いしたオーナーたちの大半が、これで社内体制を強化しようとした。
ところがこの方法で、事態が好転する確率は極めて低いのが通り相場だ。

実はオーナーとサラリーマンとでは、価値観、倫理観が根本的、決定的に違う。
何よりも、オーナーが会社で有する権力は、サラリーマン社長のそれとは比べ物にならない。
オーナーにとっては、会社のモノはすべて自分のモノ。
それこそ「一木一草、竈の灰まで」と言われるが、更には煙まで何とか使えないかと思うようだ。
一方のヘッドハンティングされた方は、ちょっと気が利いてはいるが本質は普通の会社員なので、オーナーの強欲さについていけない。
中でも我慢できなくなるのが、どこのオーナーも見られる公私混同ぶりらしい。
サラリーマン感覚ではとても許されないようなことを、オーナーはさも当たり前のようにやってしまう。
だから正義心が強いとついつい、オーナーに対して文句の一つも言いたくなる。
僕は会社のためを思いオーナーに直言した人を多数知っているが、彼らはその途端反逆者の烙印を押され、会社での居場所がなくなる。
サラリーマンとして優秀な人ほど、あるいは人間的な魅力がある人ほど、オーナー会社では勤まらない。
そんなケースを山ほど見てきた。

では、オーナーが悪いかと言えば、そう簡単な話ではない。
オーナーは、常に全財産を賭けて、全身全霊で事業に打ち込んでいる。
その危機感、使命感はサラリーマンには絶対に理解不可能だ。
そんなオーナーは、一般的な公私の差など自覚も意識もしていないから、「貴方は公私混同だ」などと批判されても、何の事だか逆に全く理解できない。
だから僕は、常にリスクを冒しながら事業しているオーナーの公私混同を批判しようとは思わない。
実は僕だって、無自覚に公私混同をしている。
例えば定期券は、会社から業務用として支給されているものだ。
厳密に解釈すると、プライベートで電車を利用する時に、通勤用の定期券を使えば公私混同になる。
しかしこの程度は、別段会社に迷惑をかけるわけではないので許されると考えている。
勤務時間中に緊急で自宅に連絡する必要が発生した時、一々公衆電話まで走るのも大変なので、ついつい会社の電話を拝借する。
これも公私混同だが、この程度は許されるだろう。

要は程度問題なのだ。
世の中、綺麗ごとだけではない。
オーナーの場合は、一般人に比べてそのスケールがかなり大きいが、背負っているものを考えれば、普通の倫理観で目くじら立てても仕方がない。
しかし僕は、例え大っぴらに公私混同ができたとしても、崖っぷち人生のオーナーになりたいなんて思いもしない。