今回の出張は、いつも催されるゴルフの予定がない。
顧客からは「是非やろう」としつこいくらいに誘われたが、一緒に行く同僚の手前、「今回は仕事メイン!」と見栄を張った。
その為、早朝から顧客訪問、昼も夜も会食しながら商談と、結構忙しかった。
出張三日目、呉江の顧客訪問。
ここは東北大震災の後、4月に一度訪問したところだ。
しかしこの二年間で、町の景色は変わり果てている。
顧客の現地責任者は、ちょうど2000年に中国に来て13年経過との事。
「中国の印象は?」と聞くと、「良い所と悪い所を経験できたことが良かった」と、やや禅問答的に答える。
更に「その意味は?」と問うと、「良い所は、中国のBig changeを実際に経験できたことで、これほどのChangeに遭遇するなんてそうはないことだ」と言うので、「では悪い所は?」と聞くと、「中国人Workerの自己主張」と答えた。
マレーシアからわざわざ来てくれた社長が、「ところで去年、君の会社が導入した機械を隣で作っているので見に行くか?」と言い始めた。
価格は100万円と言うので「100万元だろう」と聞き返すが、「No, no! 10 thousands US$」と自信満々に答える。
「チョイ待ち、我が社の購入価格は4千万円よ」と言うと、さすがの社長も目をむいて、「隣の社長には、その価格は絶対に内緒」と目配せする。
聞けば、既に1台100万円で購入済みとの事。
わずか40分の一の価格なので、どうせオンボロと思って見に行くと、外観は我が社の機械とソックリ。
テストすると、ソコソコの商品がアウトプットされる。
さすがに日本と同じ商品は出来ないが、「付属部品はつけられるか?」と聞くと、「そんなの中国では不要だが、どうしても必要ならちょっとした設計ですぐに出来るさ」と事も無げに言い切る。
しかし工場の佇まいや社長の所作振る舞いからは、特許とかに配慮しているとはとても思えない。
小汚い町工場で、日本の最新鋭機のコピーが、いとも簡単に作り上げられる。
中国、恐るべし!
この後、今回もフットマッサージに出かけた。
オプションで、足の爪切りと耳掃除を付ける。
二時間コースだが、さすがに爪切りと耳掃除の間の30分間は、マッサージを控えないといけない。
その間、オプションのない隣の同僚は背中までマッサージされているのに、こっちの少姐は二時間経過すると、サッサと退室してしまった。
中国語が全然分からないのでクレームの付けようがないが、大いに損をした気分だ。
最後も前回同様、火鍋料理を嗜む。
社長が「今回のゴルフは残念、次回は一緒にミャンマーに行こう」と誘う。
「何故ミャンマー?」と聞くと「先ずは人口が多い、労働力が良質で賃金が安い。しかも多くが英語を話す」と説明してくれた。
既に数回、現地視察を実施したらしく、「市場としても製造拠点としても将来性あり」と断定した。
酔った勢いで、「よっしゃ、では次回はミャンマー」とお追従を言ったら、即座に「では5日間の出張で、そのうち4日間はゴルフ」と決められてしまった。
この社長、現在69歳。
仕事にも遊びにも元気バリバリで、付き合うとこっちまで活力が漲る。
大いに語り、大いに笑い、心から打ち解けた会食となった。