昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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行ったことがないところ

長らく営業の仕事をやってきたので、日本全国津々浦々、歩きまわった。

観光と仕事の区別が難しい、訪問先もあった。
山口県萩市は、顧客との商談はわずかに1時間。
後は、市内の名所旧跡を案内され、俄か歴史通になった気分だった。
北海道の函館でも、似たような経験がある。
高所恐怖症なのに五稜郭に上り、土方歳三になった気分で周りを睥睨した。

こんなところで製造業の仕事なんて、絶対に割が合わないと思うのだが、顧客は自分達が生まれ育った地元への愛着が強く、決して引っ越そうとはしない。
お陰で当方は、どんなに厳しい商談でも、その後の楽しみがあるので、出張がまるで苦にならなかった。
偶の訪問先で、その土地土地の名物料理に巡り会うのも役得で、それが楽しみで仕事を厭わなかった部分がある。

長崎県には、平戸の近所の田舎に顧客が一軒しかなく、交通の便が偉く不自由だったが、営業の駆け出しの頃にそこの責任者から可愛がられていたので、泊りがけで出かけた。
鄙びた温泉宿だったが、投宿するのが楽しみだった。

今までの人生で、たった一度だけ訪問した県もある。
これはこれで、中途半端に出かけたところよりも印象に残っている。
秋田県がその一つで、30年以上も前の真冬に一度だけ出張し、名物しょっつる鍋をつついた。
あの時の訪問した顧客は、もうとっくに廃業している。
顧客だけでなく、産業そのものの栄枯盛衰を感じてしまう。

山形県には、昔から顧客が一軒もなく、仕事で出かけたことはない。
遥か昔、新入社員研修中時代の社内旅行で蔵王山へ出かけて以来ご無沙汰してきたが、最近、(と言っても5年以上前だが)高速道路を利用して5時間もかけながら福島県喜多方ラーメンを食べに行ったついでに、上杉鷹山庄内地方を観光した。

比較的近場なのに、山梨県にも顧客は少なかった。
山梨側から見た富士山の景色は、静岡に勝るとも劣らないと言われ、これを見逃す手はないと、直接は無関係なのに、わざわざ顧客の下請け先を訪ねていったら、「我々みたいな下請けまで大事にしてくれるなんて」と大感激され、大歓待を受けた。

関西での勤務経験がないので、岡山や兵庫、滋賀県の顧客へは、訪問回数は少ない。
京都で生産工場のある顧客はいないが、某大手の本社があるので偶に出張する。
しかしこの本社の近所には、神社仏閣は皆無なので、観光の仕様がない。
「京都に行った」自己満足が残るだけ。

和歌山県は、一度だけ日本を代表する企業の工場を訪問したが、それ以降は記憶にない。

四国四県も、今の仕事を担当するまでは長いこと無縁で、一度も足を踏み入れたことがなかった。
ところがたまたま一社縁が出来ると、後は一気呵成。
今や四県の全てに顧客が出来、たびたび訪問するようになって来た。
今や、世界的に有名になった讃岐うどんを、食する機会が増えた。

北陸三県と長野県は、名古屋勤務時代に度々出かけたし、家族で旅行したことも多い。
社長が新興宗教に凝ってしまい倒産危機に直面した顧客を救おうと、クリスマス返上で泊り込み、必死に対策を講じたことが一番の思い出となっている。
富山の顧客は、毎年氷見の寒鰤を丸ごと一本送ってくれた。
寿司屋に持込み、捌いて貰うのだが、頭や骨の部分を全部挙げたら、大喜びで只で刺身にしてくれた。
鰤には捨てるところなど全くないことや、買うと一本数十万することを初めて知った。

恐らくは全都道府県を走破してきたと思っていたが、あに図らんや、全く行ったことがない県が四つもあった。
青森、岩手、島根、鳥取は、不思議と商売上の縁がなかっただけでなく、観光でも行ったことがない。
島根は津和野、出雲、鳥取砂丘と大観光地があるのに、出かけるチャンスがなかった。
青森、岩手は、東京から新幹線が通ったので、行きやすくはなっただろうが、今のところ全く予定がない。
仕事を辞めたら夫婦旅でもしてみようと思わないでもないが、果たしてどんなところが魅力的かから勉強しないといけない。

60年以上も生きてきても尚、未踏の県があるとは、人間の行動力なんて高が知れている。