昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

日頃の思いや鬱憤を吐露!無礼千万なコメントは削除。

ゴルフ場が大赤字

原材料を売り込む営業担当サラリーマンだったので、様々な顧客と会ってきた。
価格交渉が主な仕事で、「他社はもっと安い」とか「値上げを飲んでいないのはお宅だけ」とか、お互いに虚々実々の交渉を繰り返した。
だいぶ昔の話だが、こちらが強硬な要求をした時、顧客側が「それなら自分でその原材料を作る会社をM&Bする」と言い出したのには驚いた。
豊富な資金力が評価されている顧客だったので、荒唐無稽な思い付きではない。
僕はそんな時には、「社長が装置産業を持つのはリスクが大き過ぎ。餅屋は餅屋。今のように価格を叩いて買う方が絶対にオ得です」と、自信満々、且つ親身になって説得し、納得して貰った。
自分の顧客がなくなるみたいなケチな根性ではなく、必要な量だけを買えばいい顧客の立場と、出来たものを全部売らないといけない装置産業では、全く経営姿勢が違うと確信していたからだ。

因みに、この社長の趣味の一つがゴルフ。
その為か、ゴルフ場を経営したがった事もある。
個人資産がいくらあるのか分からないほどの金持ちだったので、ゴルフ場のオーナーにもなるのも夢の一つだったようだ。
この時も、僕は絶対に反対の立場だった。
ゴルフ場の経営なんて、割が悪すぎる。
「隣の芝生は青く見えるモノ。大半のゴルフ場は、赤字ですよ」と言うと、「そんなモノかねェ」と未練タラタラだったが、何とか諦めさせた。

実はゴルフ場もまた、巨大な装置産業だ。
経営には、広大な土地とキャディと言う専門職が必要だし、絶え間ないメンテナンス投資も欠かせない。
その割には、年間の売上金額がせいぜい4~5億円と極めて小さい。
これだけでも、余り効率的な産業ではない事が分かる。
よって大半のゴルフ場は赤字に悩んでいて、親会社から何らかの支援がないと立ち行かない。

日本のゴルフ場は、大半が預託金制度で運営されてきた。
これは原則として、一定期間が過ぎれば預託金の返済を義務付けられているものだが、一番良心的なゴルフ場経営者でも預託金はゴルフ場建設に使い切っているので、返済の為には日々の利益を積み立てなければならないのに、赤字では如何ともし難い。
ましてや筋ワルの経営者は、メンバーから集めた金を自分のモノと錯覚、他の用途に流用してしまっているので、最早金庫は空っぽ。
多くのゴルフ場が、預託金の返済が出来ず会社更生法に逃げ込んだのは、極めて必然なのだ。

僕のホームコースは、毎年決算報告書を送ってくるが、ここ数年黒字になったことがない。
それでも数百万円の赤字で済んでいたのだが、昨年度は数千万円(四捨五入すると1億円に近い)の大赤字を計上している。
親会社から見ると、真に出来の悪い関係会社として、具体的で抜本的改善策がなければ会社清算の可能性すらある状態だ。
運営報告書には、「我が国経済の低迷、人口減少・少子高齢化で客足が遠のいた」と分析、今後は要員の効率化、徹底したコスト削減に取り組むと、全く紋切り型の説明が施されているが、恐らくは来年もまた、厳しい決算になるだろう。

ゴルフ場も装置産業なのだから、稼働率が勝負になる。
固定費は否応なく必要なのだから、損益分岐点は売上げ勝負になる。
その為、あの手この手の集客方法がとられているが、どのゴルフ場も似たり寄ったりなので、結果は安値競争になっている。
今や、少々遠出をすれば、土曜日と言えども昼食付きで5千円程度のゴルフ場まである。
これでは、メンバーの価値すらないのだが、背に腹は代えられない状態だ。

我がホームコースは、一応それなりの親会社がいて、今のところ損失補填に乗り出しているようだが、親会社の本業だっていつまで持つか分からない。
いつ何時、支援打ち切りで赤字倒産になるかもしれない。
一見華やかに見えるゴルフ場も、一皮めくれば青息吐息。
未だにバブル時代のツケを引きずるゴルフ場と、そんなお荷物を抱えたまま、本業の競争力が次第に低下している親会社の存在は、実は出口が見えない日本経済の矛盾そのものと思われる。