昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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日経新聞と東京スポーツ

日経新聞は、高杉良の小説「乱気流」で暴露されたように、社内コンプライアンスに大問題があった会社だ。
首脳陣の公私混同が激しく、社長に愛人がいて、インサイダー取引で摘発されたり、「社会の木鐸」を持って任じるマスコミにはあるまじき醜態をさらしてきた。
しかしそんな新聞なのに、他の一般紙にはない、経済中心の紙面づくりに特化している姿勢が却って目新しく、現役サラリーマンには日経新聞は必読紙となっている。
ちょっと気の利いたサラリーマンなら、自宅でも日経新聞を購読しているし、出張先でも必ずキオスクかコンビニで買っている。

実は、日経新聞の市況欄や企業情報欄は、株価を左右するほど影響が大きい。
その為に企業もまた、日経新聞の記事を注目している。
顧客と、経済状況や今後の方向性を議論する時、日経新聞が共通のネタ元になる事が多い。
他紙に比べ値段が高く、三面記事のスクープもない新聞なのに、これだけ固定客を掴んでいるのは、さすがに日経新聞だ。
日経新聞の記者は、取材態度が横柄だと評判が悪い。
僕は数回、日経新聞記者と会った事があるが、一般企業担当なんて日経新聞では亜流の様で、むしろ腰の低い記者の方が多かった。
特に社長交代記事で、他の一般紙に抜かれる事は最大の屈辱らしく、「気の安らぐ暇がない」とこぼしていた。
この辺は、我々と全く変わらない普通の会社員なんだと、妙に親近感を持ったものだ。

僕は最近の日経新聞を、先ず「私の履歴書」から読み始める。
登場人物は、全国紙で自分の過去を語るのだから、全員が人生の成功者だ。
しかし読み応えの点では、人によって大いに差がある。
会社員として功なり名を遂げた人は、大半が自慢話のオンパレードで、あまり面白いものではない。
むしろ女性の成功者は、オトコにはない苦労を重ねた人が多く、赤裸々に語るほどに覗き趣味もあり、興味を掻き立てられる。
最近ではテンプスタッフの篠原欣子、少し前だが、女優の有馬稲子佐久間良子なんて、サラリーマンの酒飲み話の格好のネタだった。
次に読むのが政治欄。
左がかった朝日新聞や、右寄りに旗幟鮮明な産経新聞に比べ、日経新聞は、比較的中立的立場の記事が多いような気がする。
そこまで読んだ後、肝心の経済記事に行く。
自分の仕事関連記事を探し、サインペンで囲んだりする。
当然、市況欄も見落とせない。
株価、為替レート、原油価格の動向確認は、サラリーマンのマストだ。
人事異動欄と慶弔欄で、顧客に変化がない事の確認も欠かせない。
最後がスポーツ欄だが、ここは日経新聞ではまるで充実していない。
しかし金田武明のグリーンサロンの頃から、この欄のエッセイ記事は読むべきものが多い。

と、毎日こんな調子でおよそ20分をかけて、日経新聞朝刊を読み遂げている。

実はもう一紙、日経新聞とは真反対だが、独自路線でしっかり固定客を持っているのが東京スポーツ
関西では大阪スポーツ、名古屋では中京スポーツで、夕方発売される。
一面は常にオドロオドロしたキャッチコピーで、購買意欲を掻き立てる。
この新聞は、ケネディ大統領が暗殺された翌日も、湾岸戦争が始まった日も、一面はプロレス記事だった。
裏から数面は、電車の中で読むのも憚られるほどの猥褻記事に溢れている。
この新聞、どんなにセンセーショナルな記事でも、名誉棄損と訴えられる事もない。
大々的に「雪男発見」とか「ネス湖の怪獣を撮った」とか発表しても、だれもが「またか!」と笑い飛ばす。
読後は手が真っ黒に汚れるようなお粗末な印刷だが、それでも東京スポーツのファンは確実に存在している。

日経新聞の読者とは胸張って宣言できるが、愛読紙は東京スポーツと言っても誰からも尊敬されない。
そんな対照的な新聞だが、両紙とも独自性を生かしたマーケティングの成功例として、サラリーマンの生き方にも参考になるような気がしている。