昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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経理を我が手に

僕が付き合ったオーナー会社には、共通項がある。
先ずは、社長が絶対専制君主
すべての決済は、社長の一存で決まる。
続いて優秀な腹心がいる。
製造現場を任された人、営業最前線の指揮者、総務関係を一手に取り仕切っている人。
皆、身を粉にして、滅私奉公、全身全霊で社長と会社に尽くす。
社長はこの腹心を縦横無尽に使いこなし、自分の思いつきを具体化していく。
それが大半のオーナー会社の成功例だ。

もう一つ、共通項がある。
経理は、社長の奥さんが見ている。
僕の知る限り、この部分はどんなオーナー会社も一緒だった。
会社の金を扱うセクションだけは、絶対に赤の他人には任せない。
組織だった企業活動が苦手のオーナーは、奥さんだけが唯一安心できる相棒なのだろう。

我が家は、オーナーの資産には足もとにも及ばないが、それでも結婚以来、経理は全て我が家の山の神の担当だった。
一体どこにいくらの貯金があるのか、我が家のオーナーのはずの僕は全く知らない。
しかし間もなく仕事を離れるタイミングになったので、徐に我が家の経理担当山の神に切り出した。
「今まで、一番大変な業務だった経理処理を君に任せきって、本当に申し訳なかった。僕も今からたっぷりと時間ができるので、今後は全て僕の方で激務を引き継ぐ。ついては直ちに実態を教えて欲しい。」
今までの心痛を労うこの暖かいオファーは、経理担当、山の神からは、「これまで何とか自分の責任を全うできた。資金繰りも含めて、一番大変な仕事から解放されて嬉しい」と、快諾されるはずだった。

ところがあに図らんや、「それは絶対にNO!いつまでも私がやるから、あなたは余計な口出しをしないで!」と、全面的に拒否されてしまった。
彼女によると、我が家の経理を担当するのは、全く苦にならないどころか、自分の一存で買い物が決める事ができるので、自分の生きがいそのもの。
何を買うにしても、一々亭主に伺いを立てるなんて、絶対に嫌、考えられないと主張する。
ここでひいては男がすたる。
及ばずながらも、「しかし僕の知人の誰某と誰べえは、家の金は自分で管理しているけど」と反論しても、「他所は他所、我が家は私が全部管理するの!」と睨みつけられる。
「二度とそんな事は考えないで!」と駄目押しされる有様で、あまりの剣幕に思わずたじろいでしまった。

そう言えばオーナー会社でも、実は経理を握っている奥さんが一番偉かった。
対外的にはオーナーが威張っているけど、万が一にでも資金ショートをすれば、とたんに債権者が鬼の形相で押しかけて来るし、その瞬間からオーナーと言えども詐欺師呼ばわりされる。
先日も厚生年金基金を20億円以上使途不明にした経理担当が逮捕されたが、経理が杜撰だとこんな悲劇が起きてしまう。
天国から地獄へのさじ加減は、全て経理が担っているのだから、実際の責任も権力も実は奥さんにある。
我が家にあっても、タイで豪遊していたオトコのような使途不明金があるかもしれないし、そんな事が可能な特権を、そうは易々と手放すはずはない。

しかし今のままでは、稼ぎがなくなった哀れな僕は、一切山の神に反抗できないばかりか、気に入らなければ我が家から放り出される恐れもある。
安っぽい懐柔策が水泡に帰してしまったので、何とか別の自衛策を講じないと、エライコッチャだ。