昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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オトコが会社を辞める時

先だって会った、ある先輩の話。
彼は五年ほど前、日本を代表する超大手有名企業を役員定年で退社、お得意さんのオーナー会社に再就職した。
以来、我が儘なオーナーに仕え続ける会社生活を送った。(らしい)
彼にとって新しく務めたその会社は、40年近く務めたそれまでの会社と余りにも違っていて、カルチャーショックの連続だったらしい。
オーナー会社では、見て見ぬ振り、聞こえても聞こえない振りも大事な処世術。
正義心からのご注進などとんでもない事で、その途端に打ち首になってしまう。
マァ覚悟の上の転職だったのだが、さすがに数年も我慢すると限界点が見えてくる。
「最早これまで」と、もうすぐ辞職する積りだと話した。

他人の精神的な辛さは、目に見えないだけに、どこまで深刻なのかが分からない。
「あぁ、そうですか」としか答えようがないのだが、彼からの「ほとんどの人は、何らかの不満を抱きながら会社を辞めるものです」の言葉には、「成るほど」と同感した。
確かに社長として大成功を納め、大満足のまま後進に道を譲った人は少ない。
会社を率いたほどの人は、「自分だからこそ、ここまで上手く行った」との自尊心が強く、他人の技量について厳しい評価をしがちで、こんな人は、なかなか社長を辞めない。
結局自分の成果に酔い、辞め時を見失い、長期に亘って君臨した結果、ほぼ間違いなく晩節を汚している。
最後は詰め腹を切らされ、意に沿わぬ形で会社を去る人が多い。
新進気鋭の若手とか、○○会社中興の祖とか、様々な称賛を浴びていても、連続赤字にでもなれば、途端に手のひらを返したようなバッシングを浴びて、退陣を余儀なくされる。

一世を風靡したような大経営者でもそうなのだから、普通の会社員が「私は自分の仕事をやりきった」と、満足しきって退社するケースは少ない。
元々大半の普通の会社員は、自分の対しての評価が甘く、常に給料に不満を持っている。
給料が自分の労働に見合っていない、もっと高くて然るべきだとの思いは、会社員の本能に近い。
定年になっても、「まだまだ若い奴らには負けない」と、自分の能力が年齢に反比例して下がっているなどの自覚を持つこともない。
よって定年になると、「もっと働けるのに」とか、「もっと働きたい」とかの思いが募り、将来への不安も重なり、戦力外通告への不満を持ってしまう。
結果として、エライさんはエライさんなりに、雑魚は雑魚なりに、ほぼ全員が何がしかの無念さを感じながら会社を去る事になる。

僕もいよいよ会社員生活に別れを告げる時を迎えた。
超凡人で、ありきたりのオトコである僕だから、人一倍やはり会社を去るのは辛い。
しかし最後の数か月は、むしろやるべき仕事が見つからず、髀肉之嘆を囲う事が多かった。
だから、やっとそんな環境から解放されるとの喜びが先にある。
皮肉な話だが、仕事を辞める感傷の前に、仕事そのものが面白くなくなっていた。
だから多くの人が感じる不満には、まるで無関係な気持ちになっている。
トータルではチャラなのだが、これも一種の先憂後楽。
何事も考え方、そう思えば前向きな気持ちになる。