あたしの名前は、ユズー・ハニー。
スケートの選手よ。
あたしさぁ、今度のオリンピック男子フィギュアスケートで、金メダリストになっちゃったのよ。
今大会で日本初の金メダルだし、過去のオリンピックを通しても、男子では初めての快挙よ。
ショートプログラムで世界最高得点を出し、貯金が一杯出来たのが利いたわ。
フリーの方は、青息吐息で危なかったの。
四回転ジャンプで二回も転びそうになったし、精神的に強くって、モノに動じないって思われているあたしでも、オリンピックって特別緊張するものネ。
足が震えるなんて、自分でも驚いちゃったわ。
だけどアタシの後で演技した、一番のライバルだったカナダの選手も、フリーで二回も転びそうになったのよ。
彼って世界選手権を何回も優勝している凄い選手なんだけど、同じような失敗するなんて、やっぱサァ、オリンピックには魔物がいるのねぇ。
そう言えば、あたしが尊敬しているロシアの大先輩が、大会の演技直前に棄権したのも大きかったワ。
仮定の話をしたって意味ないけど、彼が五体満足で出場していたら、金メダルは危なかったわね。
尤も、直前の体調管理も含めて、あたし達ってオリンピックを目指してお互いに戦ってきたのよ。
オリンピックって、やっぱり実力だけじゃ勝てないわ。
だから金メダリストになったのって、大変な事なのね。
表彰台の真ん中にも立てたし、日の丸を背負ってウィニングランもできた。
ここに来るまで、多くの人にバックアップして貰ったわ。
コーチにも感謝しなくっちゃ。
これで日本に凱旋帰国したら、きっと大変なヒーロー扱いね。
成田空港では大騒ぎで揉みくちゃにされそうだし、テレビにもたくさん出演しなきゃいけないわ。
出演料だって鰻上りだろうし、きっと選手を辞めた後の仕事のオファーも増えると思う。
だけど、長い間辛い練習に耐えてきたんだから、それくらいの楽しみがないと合わないわね。
一応男性なんだけど、スケートの選手って、あたしみたいなのが多いわ。
所作振舞いは、とっても女ッポイの。
だからかしら、「金」（きん）メダルって言葉を聞くと、ぞくぞくするほどうれしいわ。
...........午前３時過ぎのテレビは、そんな感じの妄想を掻き立てるライブ放送でした。
いずれにしても、「祝!男子フィギュアスケート初の金メダル獲得!!!!」です。
