昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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さよなら我が仕事

今日を持って、会社を辞めた。
42年間働き続けたが、最後はあっけなく「はい、さよなら」だ。
こんな僕に対しても、送別会の申し出はあったし、お世辞かも知れないが名残を惜しんでくれた人もたくさんいた。
しかし送別会の類は、全部お断り。
酒を飲んで憂さを晴らすのは好きではないし、改めてしんみり話し合う柄でもない。
粛々と最後の日を迎えた。

しかしわざわざ几帳面に、僕のところまで挨拶に来てくれた後輩が何人もいた。
その中の一人が、すでに定年を迎え、再雇用中の女性だった。
「仕事をご一緒出来て、本当に楽しかったです。貴方とは一度もデートもしなかったのに、こんなに早くお別れなんて」と涙ぐまれてしまった。
もう一人の女性は、「私にとって、貴方は職場のオアシスでした。お話をするとホッとしました」と、これまたお安くない。
「デート」の儀はお断りしたいし、いくらオアシスと思われても、色恋に発展する可能性は皆無の女性だったが、二人してエレベータまで見送りに来てくれたのは嬉しかった。

実は七年前に今の職場に変ってきた時は、それまでの仕事への思いが絶ち切れず、不安感と挫折感が入り混じった感情になっていた。
今回は、年も食ったし、何よりも半年間はやるべき仕事が見えずに辛い思いだったので、職場を去るのは、むしろサバサバした気分だった。
しかし若手社員や女性陣から個別に感謝されると、やはり後ろ髪をひかれる思いになる。

最後に皆の前で、スピーチを要求された。
「僕がゴルフを好きなのは、前にどんなにいいショットをしても、またはどんなに悪いショットの結果でも、今やるべきことは目の前のボールに全力を尽くすだけの点です。
前のショットは終わった事なので、いくら反省しても、あるいはいくら余韻に浸っても、次のショットで良い結果を残す事だけが重要なのです。
今までこの事業が良かったとしても、あるいは悪くても、君たちがやるべきことは、今の局面で全力を尽くす事です。
この事業は派手さはなく、人から注目されたり喝采を浴びるモノではないが、着実な需要があり、社会に必要不可欠なモノです。
新役員と一致協力して、事業を盛り立ててください。」
ありきたりで簡単な挨拶で、職場を後にした。

振り向けば、七年間通った職場がある。
苦楽を共にした仲間もいる。
しかし僕は、敢えて振り返らず、前を向いて一礼した。
そこが仕事人間だった僕の、第二のスタートラインだ。