昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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演歌チャンチャカチャン

長年一緒に仕事をしてきた女性は、音楽に造詣が深かった。
幼少の砌からピアノを学び、クラシックからスタートした音楽好きの正統派。
長じてはジャズに目覚め、自身もピアノ教室に通い演奏するほど本格的にのめり込んでいた。
好きなプレイヤーは小曽根真と、こちらも超シブイ。

一方、当方の音楽趣味は、文字通りの雑食。
そもそものスタートは、中学生だった時の「ウェストサイドストーリー」と「南太平洋」の映画。
これを見て以来の生粋のミュージカル大好き人間だから、結構年季が入っている。
続いては、その直後に鮮烈なデビューをした、マージービートのビートルズに痺れた。
彼等のLPレコード(当時)を全部買い漁り、一端のウルサ型評論家だった。
学生時代はハードロック派になり、レッドツェッピリンやCCRの音楽を聞き込み、典型的一発屋だったチェイスと、魅惑のギタリスト、サンタナの「ブラック・マジック・ウーマン」が大好きだった。
しかしその実態は、流行り音楽ばかりを追いかける軽薄派。

そしてこの二人に共通だったのは、演歌嫌いだった事。
二人して音楽を語れば、「五線紙に掛けないような演歌なんて、音楽として認められない」と息巻いていた。

ところが歳月は、人の好みを変えてしまう。
当方、世の荒波に揉まれ、辛く悲しい人生を歩んでいるうちに、自分でも気が付かないまま、いつの間にか心境に変化をきたしてきたようだ。
あれほど嫌っていた演歌なんぞを、聞くようになってしまった。
切っ掛けは、石田伸也の、「ちあきなおみに会いたい」を読んだ事。
美空ひばり以上と言われる歌唱力に、引退したのか、現役なのかが分からない神秘性が加わり、妙な人気を博していると聞いて、早速CDを購入してみた。
最初は、「こんな生ぬるい歌を聴くヤツの気が知れん」と、まるで馬鹿に仕切っていたが、何度か聞いているうちに、段々とメロディを口遊むようになってきた。
何よりも、歌詞と彼女の声がマッチしている。

そこで件の彼女にも、是非ともちあきなおみを聞くように勧めたが、まるで馬鹿にされてしまった。
ちあきなおみほどの大歌手でも、どうも女性には評判が良くない。
その理由を考えてみたら、うなりやコブシの利かせた演歌独特の謳い方よりも、むしろ歌詞の内容にあるのではと思い至った。
演歌に登場する女性は、「貴方のために、可愛い女でいたい」「私は日陰の身でいいの」「貴方の幸せを祈っていますと、一方的な女性側から男性への想いを持っている。
それは男性にとっては心地よく聞こえても、女性には、「オトコに虐げられる事を良しとする情けないオンナ」になり、オトコにすがって生きていく自立心のない、情けない姿にしか見えない。

件の女性は、社内で「女子社員登用運動」の委員になったり、様々な資格試験に挑戦したり、女性の社会進出に積極的だった。
そんな女性には、ちあきなおみが歌う演歌の世界は、時代遅れのアナクロにしか見えないのだろう。
オトコにとっても、ちあきなおみのようなオンナは最早どこにもいない。
そんなノスタルジアが、せめて歌の中だけでは、自分に傅く甲斐甲斐しいオンナがいて欲しいと思わせるようだ。
演歌の中だけが、オトコがオンナに威張ることが出来る世界なんて、なんて悲しい事だろう。