昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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福岡県大牟田市、徘徊への挑戦

往年の大ヒット曲、松尾和子の「再会」。
   ♪逢えなくなって、初めて知った、
   ♪海より深い、恋ごころ。

こちらは、
   ♪見えなくなって、初めて知った、
   ♪どこに行ったのかしら、ボケ老人
の「徘徊」。

最近、認知症患者が引き起こした踏切事故で、家族に損害賠償の判決が出た。
こんなケースで家族や介護ホームの責任を追及すると、認知症老人は隔離され、居場所がなくなってしまう。
認知症老人の存在を許さないような、こんな判決を下す裁判官の理性、常識を疑ってしまう。
認知症や痴ほう症老人の徘徊問題は、決して他人事ではない。
むしろ今後、大きな社会問題となる事が確実の大問題だ。

そんな認知症で徘徊する高齢者を救うため、先進的なモデルをつくりあげた市が話題になっている。
福岡県大牟田市だ。
ここでは、65歳人口の割合を示す高齢化率が32.4%に達している。
全国平均の25.1%と比べても、かなり高い。
だから大牟田市では、「高齢者等SOSネットワーク」を構築したらしい。
家族や介護施設から徘徊老人の行方不明者捜索願が出ると、警察から地元の郵便局や駅、タクシー協会、ガス会社など協力団体に連絡する。
そこから更に郵便局員、タクシー運転手、従業員に情報が流れて、捜索協力者が増えていく。
民生委員を経由して校区内の公民館長、学校、PTA、商店など市民にも伝えられる。
こんな市が、出てきたことが嬉しい。

過日、この市に住むある人物と話し合う機会があった。
大牟田市は、その昔市民が22万人を超えていた時期があるが、今や12万人を切っている。
新市長の献身的な努力で、一昨年、やっと赤字市政から脱却できたが、いわゆる過疎問題を抱えた先行きが暗い街だ。
町で若者の姿を見つけるのは至難で、目立つのは老人ばかり。
病院と葬儀屋が、妙に多い。

しかし彼は、そんな街の現状を逆手にとって、むしろ「老人にやさしい街づくり」を目指したいと言う。
市の名前も、大牟田みたいな古臭く水っぽいモノではなく、「大夢多市」に改名すべきだと主張していた。
また大牟田市は、その昔三池炭鉱大爆発で多数の死傷者が出た事はあるが、大震災にはまるで無縁。
気候は温暖で、過ごしやすい。
道路は広く、歩道も完備している。
これは、老人の散歩や徘徊には有利だ。
人口が減った事は、税収入ではマイナスだが、車が少なくなったので、交通事故が減少している事も、老人にやさしい。

町興しとなると、企業誘致や、箱もの行政に目が行く。
美術館を作って名画を集め、観光客を呼び込む計画などが一般的だが、老人だらけの街にするアイディアは斬新だし、社会公共性が高い。
彼の話を聞いていて、大牟田市、大夢多市で人生の最期を迎えたいと思う年寄りやその家族が増えれば、意外とこの案は成功するのではと思った。

因みにこの町で、最近日課にしているウォーキングをやってみた。
初めての道なので勝手が分からなかったが、開店準備中の店のオバサンから「おはようございます」と大きな声で挨拶されるし、余り客のいないコンビニでは、トイレも簡単に使用できた。
歩き易く整備された歩道を、横切る車はほとんどいない。
実に快適に、歩き回ることが出来た。

日本のどの町にも先駆けて、大牟田市が「年寄りの町」を宣言すれば、多くの年寄りとその家族が救われるだけでなく、新たな雇用も生まれるのではないだろうか。
寂れた町の逆転の発想に、大いに期待したいモノだ。