昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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チューリッヒの二日目

旅先でのこの二日間、それまでの日課だったウォーキングができなかった。
体重がフラッシュバックするのではと不安になり、異国の、且つ始めての地、チューリッヒで、敢然と早朝ウォーキングに挑戦した。
気温は15度くらいで空は晴れ渡り、絶好のウォーキング日和。
周りは、仕事に赴くサラリーマンがチラホラ。
こんな田舎都市にも、健康オタクはいるようで、早朝から自転車を漕がしたり、必死の形相でランニングしている輩とすれ違う。
「無駄な抵抗、ご苦労さん」と声をかけたくなるが、向こうもこっちをそんな気持ちで見ているのだろう。
そうこうしていると、20分も歩かないうちに道に迷ってしまった。
このままでは、異国の地で行き倒れになるとすっかり弱気になり、やむを得ず、もと来た道を忠実に戻ることにした。
何事も、進むよりも撤退が難しい。
身の安全が最優先なので、わずか1時間の挑戦で、敢え無く異国でのウォーキングはギブアップ。
ホテルに帰還後、そそくさと朝食をとり、時差ボケ対策で一眠りすることになった。

再度目が覚めた、と言うより、妻に「いつまで寝ているの!」と叩き起こされたのが、午前10時。
この日の予定は、今W杯で盛り上がっているサッカーの総本山、FIFA本部見学。
さぞや有名な観光地と思いきや、観光客はほとんど誰も行かない。
地図を頼りに、市電の駅に行き、切符を買おうとするが、全くやり方がわからない。
困り果てていると、親切そうなスイスオバハンが登場。
自分の乗る電車をスルーしてまで懇切丁寧に教えてくれたので、一日乗り放題チケットをゲットできた。
日本にも三日間だけ来たことがあるらしい、話好きのこのオバハンだったが、「どこに行くの?」と聞かれたので、「FIFA本部」と答えると、まるで意外そうな顔をされた。

実際にFIFA本部に到着しても、実に閑散としていて、敷地に入ることすら躊躇してしまう。
かましく半開きの門から中に入ると、興奮気味に記念写真を撮りまくっている中国人親子の三人組以外には、観光客の姿はない。
本部の中には、W杯のレプリカが飾られ、FIFAの公認グッズまで売られているが、商売っ気は皆無。
本業のサッカーで巨大利益を上げているので、こんなところでチマチマする必要はないのだろう。
すると、如何にも会議終了直後風情の人種雑多の20人ほどが、エレベータから降りてきて、FIFA社員とハグしながら別れを惜しんでいる。
きっとFIFAに取り入って、サッカーで一稼ぎを目論むエージェント集団に違いない。
泣く子も黙る利権集団、FIFA本部の建物は、チューリッヒの人里離れた田舎に、ひっそりと、しかし豪華な佇まいを見せている。

市電の乗り方がわかったので、町中どこにでも楽に移動できるようになった。
チューリッヒの市電は、車掌などいないので、ただ乗り自由の感がある。
稀にチェックがあり、違反者には重罰が下ると言うが、どう見てもそんなチェックがあるとは思えない。
性善説に基づく運営のようだ。

続いて向かったのは、チューリッヒ美術館。
田舎のちっぽけな美術館と思っていたら、展示されているのは世界の名品がズラリ。
ピカソ、モネ、ゴッホシャガール、その他諸々で、長時間かけて見回っているうちに首が痛くなった。
中でも、ゴッホが耳を切り落とそうとした後に描いた、自画像を見たのには感激した。
あの有名な絵が、こんな所にあるなんて、思っても見なかった。

美術館を出た後は、夕食。
スイスの物価の高さには免疫ができた積りだったが、高がすし弁当が3千円とか、日本サイズの味噌汁千円を目の当たりにすると、改めて驚き呆れる。
職人が握る日本の寿司の味とは比べようもないが、値段は日本の一流店並みなので、厳かな思いで頂くことにした。