昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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験を担ぐ

僕は元来、神も仏も信じてはいない。
御釈迦様、キリスト様、アラーの神様、はたまた八百万の神様達は、熱心な信者たちから崇め奉られている。
彼らを賞賛するありがたい教本も、世の中に満ち溢れている。
しかし、そのどの神様も、僕の信頼を勝ち得るには至っていない。

そんな訳で絶対神やその神様が引き起こす超常現象なんてまるで信じてはいないオトコだが、そんな僕とまるで正反対の人を知っている。
一人は、仕事の上でも私生活でも、僕が大きな影響を受け、敬愛する大先輩。
人間的魅力に満ち溢れていた彼だが、当時すでに社会問題化していたオウム真理教のシンパで、麻原彰晃が唱えるインチキ理論を信じるという、まるで理解不能な部分も併せ持っていた。
誰もが馬鹿馬鹿しいと思う麻原彰晃の空中浮揚なども、「彼なら出来るかもしれない」と、本気で考えるような人だった。
そんなアホな事を口走るものだから、仕事面でどんなに良い事を言っても、信用度が上がらない。
それでも、本人だけは意気盛ん。
姓名判断や方位に懲り、自分だけでなく奥さんの名前まで変えてしまう。
生まれた子供の名付け親を頼むと、三日三晩、寝る間も惜しんであらゆる参考書を読み漁る。
それほど必死に調べ抜いた結論が、長男の時は「君の姓に最適の画数は、二画五画の組合せ」と言うかと思えば、二男の時は「五画八画がベスト」などと、まるで一貫性がない。
それでも彼の仁徳で、誰もが苦笑して済ますような、そんな人だった。

もう一人は、東大卒のエリート後輩。
彼もまた、超人による超常現象の存在を信じ切っていた。
それだけなら笑い話で済むが、彼の場合は、病膏肓に至る。
そのまま会社にいたら、ソコソコの立場までには上り詰めただろうが、超常現象への興味を捨てきれず、とうとう会社を辞めてT出版社に再就職してしまった。
T出版社は、この手の記事を扱うマニアックな中小出版会社で、ここの編集長は度々テレビ出演し、荒唐無稽な与太話を披歴するので有名なオッサンだった。
ビートタケシの「テレビタックル」の準レギュラー扱いだったが、「宇宙人と会話した」とか言いだし、早稲田大学大槻教授とのガチンコディベートでコテンパンにやられていたが、その時にT出版社の社員が、この編集長の応援団でスタジオに駆けつけていた。
その中に、この後輩が座っていたのを見た時には、何とも不思議な気分になった。

先輩も後輩も、世間からは白眼視されるような胡散臭い代物に興味を持ち、その結果、一般的な見方をすれば損をしたと思うが、本人は自分の信じる道を一直線。
他人の評価など、気にするような素振りも見せなかった。
僕は極めて常識的人間を自負しているので、この二人のように超常現象を信じるなんて事はあり得ない。
むしろ、如何わしいモノを見るような、批判的な意見の持ち主だった。

だから、見えないモノに畏怖の念を抱く事なんぞ考えられないはずなのだが、しかしそんな僕が一旦困った事態を迎えると、状況が一変する。
一気に、あらゆる神様にすがり、頼り切る。
まるでご都合主義の、無宗教徒なのだ。
しかも、頻繁に験を担ぐ。
宝くじを買う時に、よく当たると言われる売り場を探したり、ゴルフのスコアが良かった時の服を続けて着てみたり、まるで非科学的だが何か見えざる力を信じている部分がある。
神も仏も信じていないと言いながら、反面、眼に見えない効力を期待して験を担ぐ。
これは、明らかに内部矛盾だ。
まぁ、僕の場合、誰にも迷惑を掛けないレベルなので、言行不一致も大目に見てもらっているようだ。