昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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ツァー旅行にさようなら

ザルツブルグのホーエンザルツブルグ城の観光を終えて、日陰で一休みしている時、隣に日本人の老人が座っていた。
暫くすると、この人の奥さんと思しき老婦人が城から戻ってきて、この老人と話し始めた。
「大丈夫?」
「ウン、休んでいたから大丈夫。」
どうやら奥さんだけが城の観光に出かけ、ご主人の方はヘバってしまって観光を諦めて休んでいたようだ。
続いて奥さんは、「主人が疲れているので、今からの予定をキャンセルしたい」とツァーの添乗員に電話をしている。
ご主人が電話に代って、「もうヘロヘロです。午後5時半からの予定は大丈夫だけど、それまではホテルに戻って休みたい」と頼んでいる。
 
この状況は良く分かる。
この夫婦に関しては、ヨーロッパ観光は奥さん主導で決まったようだ。
ご主人は奥さんと違い、各地の名所旧跡など大して興味もない。
それでも奥さんの強い憧れにご相伴の形で出かけては見たが、弾丸ツァーの忙しさに体力がついて行かない。
決まったスケジュールをこなす事だけで精一杯と疲れてくると、元来関心が薄い観光を真っ先にギブアップし、むしろ食事に残った全精力を傾ける。
ただただ奥さんにくっついて、ヨーロッパを旅行する事だけが目的でツァー旅行に参加した、日本のオヤジさんのいじらしさと可愛らしさを垣間見た気分だった。
 
僕は2000年に、バリ島に夫婦して旅行をした。
この時はごく当たり前の感覚で、近所のツァー旅行会社に申し込んだ。
しかし〆切になっても、申し込んだのは我々夫婦だけの貸切りのツァーになり、大儲けの気分でバリに向かった。
現地ガイドを独占できるので何かと便利だと思ったが、しかし日程と訪問先は予め決まっていて、勝手に変更する事は出来ない。
到着の翌日から、早朝から夕食まで、ビッシリと詰まったスケジュールをこなす事となった。
 
観光地巡りは、こちらも行きたい所ばかりだったので、いくら忙しくても我慢できた。
しかしどうしても馴染めなかったのは、毎日必ずついている昼食と夕食だ。
これが、ほとんど不味い。
不味い上に、ツァーに組み込まれているので、どんなに食欲がなくても、エージェントが予約しているレストランへ、必ず連れて行かれる。
正直言って、これには参った。
しかもこれが、一番辛かった。
 
実は当たり前だが、ツァー旅行はコンパクトに、と言えば聞こえがいいが、観光名所の表面ヅラを撫でるように訪問していくように日程が組まれている。
美術館でも、ガイドが有名絵画の前で説明を終えると、他の作品には目もくれず、次の目的地へバスで移動する。
移動手段も、飛行機や列車は遅延や変更のリスクがあるので、バス利用が基本。
すると、ほとんど体力を使うことなく移動しているので、大して腹も空かない。
それでも食事時間になると、旅行者が用意したレストランへ連れて行かれる。
嫌でも付き合わざるを得なかったこの食事が嫌で、ツァー旅行にアレルギーが発生し、以降は二度とツァー旅行に参加する事がなくなった。
 
ツァー旅行のメリットには、添乗員が付いているので、言葉の不安がない事もある。
トラブルが発生した時にも、添乗員に丸投げできるのは大変心強い。
あるいは自由時間の過ごし方や、土産物ショップなど、添乗員のアドバイスがあれば安心できる。
何かと相談相手がいる事で、気楽に旅行を楽しむことが出来る。
言葉が万全でないのは我々夫婦も同じだが、何度も夫婦だけで海外に出かけているうちに、妙な度胸がついてきた。
言葉なんて、通じればいい。
身振り手振りで何だかんだと話していると、外国人は必死になってコッチの言いたいことを理解しようと努力してくれる。
流暢で綺麗な英語でなくても、志さえあれば何とかなる。
大トラブルが発生しても、絶対に自分たちだけで解決しないといけないので、むしろ開き直りの気持ちになり、ブロークン英語でも駆使しているうちに解決できるとの自信もついた。
 
そんな事を経験的に学んだので、ツァー旅行にはさようなら。
往復の飛行機と宿泊するホテルだけを予約、後は勝手気ままな旅をしている。