minakoさんのブログ「キッチンの片隅から」は、女性特有の柔らかい口語調で書かれているが、内容は鋭く世相を切り結んでいる。
今回の安保関連法案に「戦争は嫌だ」と情緒的、観念的に反対する、自称「ハハオヤ」や自称「リベラル」連中に比べ、冷静沈着な意見なので、大いに参考にしている。
その彼女が、最新のブログ記事で「関西弁というのは、公に使われると神経を逆なでする」と書いた。
物事の肺腑をつき、真髄に迫る内容なのに、聞いた側にはホンノリと諭された気分にさせる。
こんな人物の関西弁なら、絶対に不快な気分にはならないはずだ。
Minakoさん自身も認めているように、関西弁は「緊張感を感じさせない」効果がある。
だから議論の中で関西弁を使うと、言いたいことをズバリと切り込んでも、刺々しさが消えて、円やかに伝わる。
(映画「悪名」で有名になった、河内弁は別物。)
「オマエを完璧に論破してやる!」と居丈高に凄まれた時に、「イヤァかなわんワァ」と切り返せば、相手の闘争本能は大いに損なわれるだろう。
むしろ関西弁で難しいのは、そのイントネーションをマスターする事にある。
もう30年ほど前になるが、出社してきた先輩の機嫌が何時も悪かった時期がある。
理由を聞くと、関西を舞台にした当時のNHK朝の連続ドラマが、気に入らないと言う。
「ヒロイン役の女優の関西弁が、聞くに堪えない」らしいのだ。
「関西人は、絶対にあんな喋り方はしない。あれは関東の役者が付け焼刃で関西弁を使っているに違いない。あんな妙な関西弁を朝から聞くと、飯が拙くなる」と力説していた。
僕も、議論が紛糾した時に、関西弁で場を和ませたいと思った事は多々あった。
しかし僕自身は、自分が生まれ育った地方の方言と、標準語モドキしか喋れない。
本家本元に不愉快な思いをさせてまで、関西弁を使う勇気がないので、残念ながら一度として関西弁の効用に浴した事はない。
関西弁を使う連中には強い拘りがあり、東京で仕事をしても関西弁を使い続ける。
僕の知っている某超大手財閥系企業では、出世する人の三条件として、「東大(法学部)、査業部出身、関西弁」と揶揄されていた。
この会社では、社員こぞって関西弁を使うが、その大半が如何にも使い慣れていないのに、無理して使っている感アリアリの妙なイントネーションで、大変耳障りだった。
生粋の関西弁を、無理なく使い熟すことが出来る関西人は、それだけでも議論巧者の資格がある。
羨ましい限りだ。