もう40年に亘る、年季の入ったアメリカンフットボール、とりわけNFLファンだ。
当初はかなりマニアックな存在で、テレビ放送もほとんどなかった。
地元意識や歴史的な名選手も知らないので、当初は贔屓チームがあったわけではない。
ただ1989年のスーパーボールを見て以降、熱烈なシンシナチ・ベンガルズのファンになった。
その時の悔しさを共有した思いに駆られ、以来ベンガルズを応援し続けてきた。
最近の六年間は、プレイオフには進出するが、必ず図ったように初戦で敗退する。
今年こそプレイオフで一勝をと、祈るような思いでテレビを見るが、その度に溜息をつく毎年だった。
ところが今シーズンは、序盤から様子が違った。
何せベンガルズは、89年スーパーボールに進出した時を超えて、開幕から七連勝を記録した。
これは期待できると喜んでいると、好事魔多し!
年末になって、チームのキーパースン、QBのアンディ・ダルトンが利き手の人差し指を骨折。
控えQBで、プレイオフを勝つことは難しい。
今年もベンガルズの勝利はお預け、そう諦めてライブ放送を見た。
案の定、控えQBは全く冴えない。
お粗末なプレイが続くと、分かっていてもだんだん腹が立ってくる。
ところが最終4Qになって、突然ベンガルズが覚醒、何と残り1分30秒で逆転した。
しかもその後の相手チームの最初の反撃パスを、ディフェンスがインターセプト。
こんな展開になると、負けるはずがない。
そのままボールをキープしてさえいれば、自動的にゲームセットになる。
僕はテレビを見ていて、思わず「ア~アッ」と呻き声をあげた。
それでもここで気を取り直して、相手の攻撃をゼロに抑えれば勝てる。
何せ相手には、時間がない。
ハラハラドキドキの時間が過ぎて、残り22秒。
敵方QBのパスが失敗して、ほぼ万事休す!………….のはずだった。
ところがベンガルズディファンスは、まるで不必要なラフプレイを仕出かし15ヤード進まれた。
しかしここで踏ん張れば、敵方のFGも、失敗の確率が高いから勝てる!…………はずだった。
ところがここで、更に信じられない事態が発生した。
この審判の判定に不満なベンガルズディフェンスが猛抗議した結果、更に反則を取られ15ヤード進まれた。
プレイゼロで30ヤード進まれたら、もう勝てない。
あっさりと敵方に逆転FGを決められ、今年もまたプレイオフ初戦であえなく沈没してしまった。
最初は全く期待していなかったが、途中で小市民の夢が膨らんだ。
それだけに、今回の敗戦は心身に堪えた。
ベンガルズが勝とうが負けようが、僕にとって一文の得も損もない。
しかしこれがファン心理。
勝てばうれしいし、負ければ不機嫌になる。
もうベンガルズを、応援するのはやめようかな!
そう思っていても、来年になるとまた、ベンガルズのことが気になってくる。
弱いチームを贔屓するのは、性悪オンナに惚れた純情オトコみたいなものだ。