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東京都知事、小池百合子がやったこと

テレビのワードショーを見ていたら、女性コメンテータの伊藤某が小池百合子支持の熱弁を奮っていた。
番組の中で「IOC、東京オリンピック組織委員会との争いで小池は負けた」との意見に対し、彼女は「小池知事は負けていない。我々が忘れていた復興オリンピックの考え方を思い出させてくれたのは小池知事の功績だ」と主張していた。
「IOCバッハ会長とのホットラインが出来たことも、小池百合子都政の成果だ」という輩もいた。
 
僕は会社生活が長かったので、このような情緒的な意見には与しない。
収益が重要な企業活動で、結果が伴わないのに「良いことを言ったのが功績」などと褒められることはあり得ないからだ。
 
さすがにその場でも、「復興オリンピックに関しては一年半も前に、当時のオリンピック担当大臣が野球予選の福島県開催を依頼していたので、小池百合子の専売特許ではない」との反論もあった。
僕は、復興オリンピックは誰が言い出しっ屁なのかは、大した問題と思っていない。
ただ、もしも小池百合子がほんとうに復興オリンピックに拘るのなら、ボート競技の会場は絶対に長沼に変更するべきだったと思っている。
何故なら、長沼でオリンピックが開催されない以上、いくら「東京オリンピックは復興が目的だった」と言い募っても、被害地は復興の欠片も恩恵に浴さないからだ。
しかも小池百合子は、わざわざ長沼の候補地を視察し、あたかも可能性大のようなリップサービスまでしている。
普通の感覚なら、東京都知事がわざわざ、しかも当時のライバル地、埼玉彩湖には見向きもせずに長沼を訪問したら、「これで決まり!」と勘違いしてしまう。
 
しかし小池百合子は、IOCバッハ会長を過小評価していた。
「改革」を錦の御旗に、東京都民や国民から熱狂的に支持されていた小池百合子には、バッハ会長も一目置いて、「コスト削減」の大義名分を掲げれば候補地変更には理解を示すと勝手読みをしていたようだ。
ところが相手のバッハ会長は、激烈な権力闘争の結果IOCの頂点に上り詰めたオリンピック貴族だ。
自分の可愛い子分衆のJOCや組織委員会の立場を、疎かにするなどあり得ない。
すげなく原則論を持ち出し、高人気に昂揚気味だった小池百合子の鼻っ柱をへし折ってしまった。
これを持って、「小池とバッハのホットラインが出来た」などは笑止千万の見解だ。
その後の小池百合子を見ると、当初の勢いはどこへやら、すっかりトーンダウンしてしまい、最早長沼でのボート競技開催など「兵どもの夢のあと」状態になっている。
 
実は豊洲問題も、出口が見えない迷路に陥っている。
今では豊洲紛糾の戦犯になった石原慎太郎が、豊洲移転を言い出したそもそもの理由は「築地は狭く、危険で、且つ食の安全性に問題がある」だった。
今では豊洲の危険性だけが問題視されているが、それは築地の安全性が前提となっている。
しかし当時の副知事だった猪瀬直樹はテレビ番組で、「今でも商売をやっている人がいるから言えないが、築地の安全性には問題がある」と明言している。
実際に豊洲でやっているような安全性チェックをすれば、築地の食の安全など単なる幻想と分かるはずだ。
 
小池百合子は、都知事選で争った自民党都連のアキレス腱を突く積りで、豊洲問題を俎上にあげた。
その結果「都議会のドン」を巡る利権構造が明らかになるはずだった。
しかし結果は、既に5000億円とも6000億円とも言われる都民の税金を投資した豊洲市場が、まるで使い物にならないガラクタになっただけだ。
しかもその理由は、「やれヒ素が出た」とか「ベンゼンが検出」とか、ヒステリーかイチャモンに近いモノばかり。
専門家が「実は地下空間は必要なモノ」などと説明しても後の祭りで、豊洲は汚染塗れの印象が染みついてしまった。
今更「安全性調査の結果、豊洲は安全」と宣言しても、最早あの土地は使い物にならないほど信用を失墜している。
「しからば築地を再開発」となれば、その費用は莫大であり、且つ安全性は確保されない。
既に豊洲に投資してしまった業者への補償にも、税金を投入せざるを得ない。
全く袋小路に陥り、次の手が見えなくなってしまった。
これを以てしても尚、「小池百合子のお陰で豊洲の実態が分かった」と評価する人がいることに驚いてしまう。
 
都民、国民は、「一部の人が勝手に利益を独り占めしている」とか、「役人が不正をしている」と言われると、直ぐに「それは怪しからん、改革だ」と騒ぎだす。
そんな大衆の熱狂を利用すると、ポピュリスト政治家が大人気を博する。
小池百合子はその典型で、彼女のお陰で税金の無駄遣いが大幅に減ったと信じている人が多い。
小池百合子がオリンピック三会場見直しを提案したので、400億円の建設コストが削減されたとの意見もある。
しかしIOCですらコスト削減を志向している現在では、果たしてこれは彼女だったから出来たことなのか。
膨張するオリンピック予算を放置するなど、普通の政治家ならあり得ない。
他の都知事でも、似た様なことを模索しただろう。
 
しかし小池百合子豊洲でやったことは、豊洲への今までの投資を水泡と期す可能性がある施策だ。
重箱の隅をつついて豊洲の安全性を棄損した小池百合子は、その着地点を示すことはない。
こんな政治家を、「現代のジャンヌダルク」と称賛する連中の気が知れない。