そんなことを、よく表す事態に出くわした。
先だって久しぶりにドライバー買替えを考え、ネットのオークション情報を調べていたら、とんでもないモノが出品されているのを発見した。
最近は競技では使えなくなったが、飛距離重視の高反発タイプドライバーも依然として売られている。
しかし不正を防止するために、製品名で高反発タイプと分かるようになっている(らしい)。
ところがこの出品者は、「近所のプロショップで名前の部分を消し去り、しかも更に塗装直しをして、元の製品名が分からないようにヘッドを改造した」と書いている。
要は、「ルール違反のドライバーを、競技で使用してもバレないようにしました」と言っているのだ。
この出品者の心情で唯一理解できるのは、飛距離への拘りだけだが、だからと言って不正を働いてはいけない、
誰かが落札したのかは知らないが、出品者はこんなクラブを改造した時点で、落札者はそうと知って落札した時点で。いずれもゴルファー失格だ。
こんな妙チキリンなことが起きるのは、高反発ドライバー規制が何とも中途半端だったからに違いない。
それまでクラブメーカは競って高反発タイプを売り込んでいたのに、ある日突然使用禁止になる。
大義名分は、「このまま道具の進歩が続けば、コースが追い付かなくなる」みたいな理屈だった。
やむを得ず新しいドライバーに換えざるを得なくなったが、この時に、プライベートでの使用なら高反発タイプの使用が許可された。
しかし、それはおかしい。
飛距離が問題で、それをクラブ規制で解決できると思ったのなら、高反発タイプは全面禁止にするべきだった。
しかし実際は、クラブヘッドではなく、むしろシャフトとボール改良の影響の方が大きく、折角高反発タイプを規制しても全く飛距離に影響しなかった。
と言うよりも、むしろ高反発タイプ規制前よりも、今の方が飛んでいる。
今や男子プロのトーナメントでは、400ヤード超のパー4で、第一打にスプーンを使う飛ばし屋がゴロゴロしている。
このままでは、500ヤード超のパー5で、ドライバーもスプーンも不要、アイアンだけでツーオンみたいな事態が当たり前になってしまう。
飛距離を抑えるためなら高反発ヘッドを規制よりも、飛ばないボールを開発した方が効果が大きいし、、ゴルファーへの経済負担も小さい。
その昔、絶対的な強さを発揮していたジャック・ニクラスは、飛び過ぎの弊害を予見し、「飛ばないゴルフボール」として提唱していた。
ゴルファーにとって、飛距離とパターは、一番の快感を伴う。
しかしこのまま道具の改良による飛距離アップが続くと、ゴルフの楽しさが偏ってしまうのではないか。
ボールは売上げが一番小さな商品なので、クラブメーカーにとってはおいしくない話だろうが、ここまで大衆化たゴルフ人気を維持し、更に強くするためには、ゴルファー全員が飛ばないゴルフを受け入れないといけないだろう。